ポートアクセス法による僧帽弁形成術
ポートアクセス法による僧帽弁形成術は
患者さんに優しい手術として好評をいただいていますが、
ミックス手術(MICS)のなかでどういう位置づけにあるのでしょうか。
◆従来の胸骨正中切開による僧帽弁形成術:
もっとも心臓全体が見やすく安心感はあります。
しかしこと僧帽弁そのものはまずまず程度の視野しかなく、
それは前方から見下ろす角度となるからです。
体外循環では上行大動脈から送血するため安全性も高いです。
長い歴史と多くのノウハウの蓄積がある、
標準的なアプローチ法と言えましょう。
かつてアメリカのクリーブランドクリニックなどで多数行われた方法です。
創の長さが従来の胸骨正中切開より半分以下となり、
胸骨も半分あまりしか切らないため、
術後の安定度も良く、低侵襲という印象はあります。
ただし視野を確保するために、両心房上方アプローチにすることが多く、
この場合、洞房結節動脈を切断するため、
長期的には洞結節不全となりペースメーカーが必要となるケースも少なくありません。
そのため真の低侵襲といえるかどうか疑問が残り、
私たちは僧帽弁手術には現在使用していません。
我が恩師・トロント大学のDavid先生が好んで使用しておられる方法で、
胸骨は慎重に通常どおり切開しますが、
皮膚切開を通常の半分以下に抑えます。
そのメリットは主に美容上のそれに限られますが、
必要に応じて、いつでも通常のフル切開に切り替えられるという利点はあります。
そのため重症例や複雑手術例には有効な方法です。
右開胸それも皮膚切開が長さ6㎝程度のちいさいものとなり、
胸骨をまったく切らないため、術後の治りも早く、
痛みも軽くかつ短期間ですみます。
僧帽弁もほぼ真正面から見えるため、
うまく術野を調整できるチームなら質的にもメリットが生じます。
ただし小さい皮膚切開の場合、大腿動脈から送血する必要があり、
術前の大動脈の正確な把握が必要です。
逆にそれによってこれまで無事故で実績を積んでいます。
その1と同様の方法ですが、
大動脈や大腿動脈に動脈硬化などの所見があるときには
送血管を術野ごしに上行大動脈に入れることもあります。
大動脈遮断かん子も術野から入れることがあります。
そうした場合は皮膚切開がやや大きくなりがちで、
ミックス手術としての良さが多少とも割引になることもあります。
その1をさらに進化させた内容です。
皮膚切開は5cm以下とし、
内視鏡(胸腔鏡)を入れて、それを見ながら手術を進めます。
内視鏡の位置や使い方がより重要性をもちます。
肉眼よりも解像力が落ちる内視鏡を、
どのように使いこなすかが大切です。
◆ポートアクセス法その4:
さらにそれを進化させ、ダビンチロボットをもちいて、
内視鏡を見ながら手術を進めます。
皮膚切開はさらに少し小さくなる可能性はありますが、
ロボットのアームなどを入れる穴を皮膚にあらたに開けるという問題点もあります。
よりすぐれたロボットや部品の開発が待たれます。
このように僧帽弁形成術におけるポートアクセス法は
ミックス手術の中でユニークな位置づけにあります。
こうした特徴を十分見極めてベストの選択を行うことが患者さんの安全や利点につながることでしょう。
メモ: ポートアクセス法では肋間神経のエリアを切るため、かえって痛みが強いのではないかと心配される方が医師の中にもおられます。
私たちは肋間神経ブロックを手術中に行うため、術後当分の間は創の部位での感覚がなくなるか鈍感になるため、患者さんの痛みは大きく減るのです。
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