ポートアクセス法手術の位置づけは――過渡期?完成型?
ポートアクセス法では主に右胸を小さく切るだけで心臓が治せるため、
術後の痛みが軽く、
骨を切らずにすむため仕事復帰や社会復帰が早く、
創もみえにくいため美容上も有利で、
患者さんの心の負担が軽くてすむという利点さえあります。
写真右上はポートアクセス法による僧帽弁形成術のひとこまです。
創部の長さは約6㎝程度です。
しかし写真右下のように弁は良く見えています。
僧帽弁形成術がきれいに決まった瞬間です。
手術の質を落とさずにすむことがおわかり頂けるかと思います。
こうしたさまざまな利点をもつポートアクセス法ですが、
開胸をともなう低侵襲小切開手術いわゆるMICSの中で
その位置づけはどういうものでしょうか。
さまざまな意見や考えがあります。それらを総合して考えれば、たとえば
第二段階.ポートアクセスで胸腔鏡なし
第三段階.ポートアクセスで胸腔鏡使用
第四段階.ロボット(ダビンチSなど)
がその一例です。
写真右はダビンチでの手術中のひとこまです。
創の大きさは
第一段階 8-15cm以上
第二段階 6-8cm(5-6cm)
第三段階 4-6cm
第四段階 4cm前後
となりますが、第二第三の皮膚の穴、つまり長さ4mmから8mm程度の穴の数は
第一段階 2つ(ドレンの穴2つ)
第二段階 3つ(ドレンの穴2つ+クランプの穴1つ)+微小な穴2-3つ
第三段階 4つ(ドレンの穴2つ+クランプの穴1つ+胸腔鏡の穴1つ)+微小な穴2-3つ
第四段階 5つ(ドレンの穴2つ+ロボットアームの穴3つ+胸腔鏡の穴1つ)+微小な穴2-3つ
などが考えられます。
なお術者の工夫により、穴の数は多少変動はあります。
たとえばクランプ穴からドレンを入れるなどして、
そこで穴の数をひとつ減らすなどが可能です。
私たちの経験では最近はほとんどのケースで穴は1つに抑えることができています。
こうしてみますと段階が上がるにつれてメインの創は小さくなって行きますが、
小さな穴の数は増え、
とくにロボットではアームが2+1本あるためより多数となります。
小さな穴は目立たないから構わないとする考えもありますが、
これらの穴は白人とちがって日本人などの有色人種では色素沈着が起こると意外に目立つもので、
気にすれば気になるというレベルのものです。
そしてコスト面では
第一段階 通常の正中切開手術と大差なし
第二段階 ポートアクセス(MICS)用の手術器械が必要。初期費用約200-400万円
第三段階 上記に加えて胸腔鏡やビデオ録画などのセットが必要。約200-400万円追加。
第四段階 ダビンチロボットは約3億円+維持費や消耗品などが高価。
値段の高いアームは定期的に新品と交換が必要ですし、
無菌操作用のカバーなども毎回交換となり費用がかさみます。
これらを総合的に勘案してポートアクセス法の位置づけを考える必要があります。
創はロボットについで小さく、
小穴が少ないため総合的にきれいな仕上がりになりやすく、
コストもそう多くかからず患者さんや病院の経済を圧迫する恐れは少ないと言えます。
時間的にもやや有利ですから患者さんの体への負担や安全性でも少しは利点があります。
胸腔鏡を使うかどうかで微妙な差があり、これは今後の課題です。
私たちは現時点でこのロボットなしポートアクセス法が一番実用的かつ患者さんに益するものと考えています。
なおこれは弁膜症や不整脈手術でのポートアクセス法手術の場合で、
冠動脈バイパス手術の場合はロボットで内胸動脈を剥離・採取するなどの活用法もあり、
異なる価値判断ができるかも知れません。
またこれらのお話しは心臓手術についてのことで、
泌尿器科や産婦人科でのMICS手術での話とは異なります。
たとえば泌尿器科の前立腺手術では前からアプローチする場合、
手術部位が大変深いためロボットが有利で、
実際アメリカでは多くの施設がそれを活用しており、
日本でも泌尿器科領域では人気を集めつつあります。
心臓とは少し違う状況です。
ともあれこうしたポートアクセス法に代表されるミックス手術(MICS)が進化すれば
心臓血管外科手術もこれまでより一段高い評価や感謝を
患者さんから得られるようになるかも知れません。
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