9) ミックス手術(MICS、小切開低侵襲手術、ポートアクセス手術)は危険なの?
心臓手術の進歩と世の中のニーズによって
ミックス手術(MICS手術)つまり小切開低侵襲手術(ポートアクセス手術など)が注目を集めています。
右図の左側は通常の僧帽弁形成術のときの創で、
右側はミックス手術による僧帽弁形成術による創です。
私たちの経験では、ミックス手術(ポートアクセス法)では皮膚を小さく切り、多くの場合骨も切らないため、
術後の回復が早く、創もきれいで
患者さんの肉体的精神的負担も軽くなる傾向があります。
胸骨を切らない右小開胸のミックス手術(ポートアクセス法)では
骨髄からの滲みだし出血(Oozing ウージングと呼びます)もないため無輸血手術がやりやすいという利点もあります。
そのため速やかな仕事復帰が望ましい20代から60代までの仕事年齢にある方がたや
美容に関心のつよい若い世代の女性はもちろん、
さまざまな年齢層に男女を問わずミックス手術は喜ばれています。
しかしミックス手術では、従来の胸骨正中切開つまり大きく前胸を切り開く手術と比べて
狭い術野で心臓の内部の修復をするため、
心臓を治すという観点からは不利ではないかとする意見もあります。
手術の質を落としていないかというわけです。
私たちのスタンスは「創がいくらきれいになっても手術の質は落としてはいけない」です。
それはすなわち「安全第一」にもつながります。
しかし狭い視野でやるよりは広々とした視野でやるほうが手術しやすいのは確かです。
そこで考えました。
狭い視野でも治すべき部位をきれいに出し(これを「術野を展開する」といいます)、
展開したところをきちんと修復するのは、経験豊かな術者ならできる、
またできる範囲内の病気をあつかう、それなら
そして心臓を安全に止める時間は、その患者さんの心臓や全身の状態によって予測ができますので、
たとえばミックス手術で通常の1.5倍かかると考えられ、
通常は60分程度の心停止でできる手術ならミックス手術では90分でできる、
安全限界が150分と考えられるならこれはゆうゆうと成り立つ、といった具合です。
平素から無駄を省き、ポイントを押さえて比較的短時間に弁形成術や弁置換術を行うようにしている努力がここで生きるわけです。
たとえばこれまでの経験から僧帽弁形成術で典型的なものなら普段40-60分でできるため、
ミックス手術でも90分もあれば十分できる、
などの状況が生まれやすいわけです。
それからいざというときにいつでも安全確保できる体制や準備も大切です。
必要とあらば即座に胸骨正中切開に切り替えて十分な安全性を確保するようにしています。
現実にそうなったケースはありませんが、その安全と安心は大きいと考えています。
たとえば弁形成がかろうじて行えるチームとか、
後尖の形成だけはやれますなどのチームではミックス手術(MICS手術)は危険であり、やるべきでないと言えましょう。
技術的にも時間的にも余裕がないからです。
上記の計算法で行っても、僧帽弁形成術を心停止時間で90分もかかるチームではその1.5倍かかれば2時間をゆうに超え、
そうしたレベルでは2倍以上もかかることがあるため3時間にも達します。
これは危険です。
やはりミックス手術は通常の弁形成や弁置換は目をつぶってでも、
ライブ手術の場でもゆうゆうとやれる、
そうした熟練チームで行うべきものです。
以上、ミックス手術での僧帽弁形成術や僧帽弁置換術あるいは大動脈弁形成術や大動脈弁置換術などが
どのようにして安全に行えるか、
について解説しました。
お問い合わせはこちらへどうぞ



コメント