ミックス手術(MICS、ポートアクセス法)で社会復帰が早いわけは?
ミックス手術(MICS手術)とくにポートアクセス法の手術のあとは
患者さんの社会復帰が早い傾向が見られます。
写真はミックス手術による僧帽弁形成術、1か月後の創です。
向かって左端に見える小さい線が創です。
たしかに私たちの経験ではミックス手術のあとは痛みも多くの場合軽く、
退院も通常の正中切開つまり胸の真ん中を大きく切る場合よりも
3日以上早くなって平均10日で退院されています。
私たちの心臓外科へは全国からつまり遠方から飛行機や新幹線などで来られる方も多いため、
余裕をもって退院して戴いていることを考えると、かなり早い回復と言えましょう。
それではなぜミックス手術とくにポートアクセス法の心臓手術のあとは早く元気になれるのでしょうか。
1.まず考えられるのは骨を全然または一部しか切らないからです。
右小開胸のミックス手術では骨はまったく切りません。
皮膚や脂肪や筋肉は小さく切りますがこれらは1週間ほどで治ります。
心臓手術で骨とくに胸骨を大きく切るのは50年以上前からの、いわば「常識」でした。
しかし考えてみれば、
スポーツ選手でも、たとえばプロ野球選手を例にとれば、
試合中などにケガをして骨折したらそのシーズンを棒に振るなどの大きな影響がでます。
でも擦り傷やねんざ程度ならまもなく復帰して来ます。
骨が折れるあるいは骨を切るということは回復や復帰に大変時間を要するのです。
MICSが患者さんに有利なのは当然かも知れません。
右の小開胸はもちろんですが、
胸骨部分切開でも患者さんの復帰は早いという印象があります。
これは胸骨の下半分はまったく切らないため、
骨の安定が良く、痛みも軽く、治りも早くなるためと思われます。
2.もうひとつ考えられるのは、やはり痛みが少ないためでしょう。
患者さんは前向きに積極的に仕事などの社会復帰に意欲がわくのです。
これは上記のように骨を切らないあるいは
切っても一部であるため
骨からの痛みが少ないことが影響しているようです。
さらに、皮膚からの痛みが大きく減ります。
皮膚を切る長さが半分から3分の1まで減るわけですから理解できることです。
これに加えてポートアクセス法などの右小開胸では肋間神経ブロックを行い、しばらくの間、肋間神経をマヒさせますから、痛みはやわらぐわけです。
皮膚は痛みの神経が多数ついており、
体の中でも一番痛みに敏感な臓器ですから
皮膚にやさしい手術は患者さんにやさしくなるわけです。
3.さらに皮膚や骨を小さくしか切らないあるいは全然切らないため、
ばい菌による感染が減り、
また心臓への刺激が少なくなり不整脈の発生も多少とも抑えやすいことが可能性として考えられます。
これはまだ検証が必要ですが、
少なくとも骨をまったく切らない右小開胸の場合、
骨の感染はゼロですから
縦隔炎などの危険な合併症が未然に防げるという大きなメリットが考えられます。
小さな創をみて
患者さんがこんな小さな創なら大丈夫!
と自信をつけられることがあります。
気持ちが後ろ向きにならず、
どんどん健康生活を取り返す意欲がわくというのは大切と思います。
たとえばゴルフなどのスポーツにも早く復帰できますし、
ゴルフのあと仲間と一緒にお風呂に入っても
創が見えにくいためお互いあまり気にもならないし
聞かれることも少ないので精神的ストレスが小さい
というご感想を頂いたことがあります。
身内に大きな正中切開による心臓手術を受けたかたで、
そのストレスをよく御存じだったようです。
このようにミックス手術(MICS手術)やポートアクセス法による心臓手術では
早い社会復帰が得られやすく、
今後も安全が確保できるケースではどんどん進めて行きたく考えています。
なお現在私たちのチームで何らかのミックス手術が使える手術は以下の通りです:
ASD心房中隔欠損症、VSD心室中隔欠損症、三心房心、その他です。
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