上行大動脈瘤――治せる病気です、油断めされぬよう
上行大動脈が拡張つまり大きく膨らんで、
破裂したり解離(壁が内外に裂けること)すると突然死する病気です。
瘤のでき方に、こぶができる真性瘤と最初から壁が裂ける解離性などがありますが、
ここでは真性瘤について解説します。
上行大動脈は何らかの原因で拡張しこぶになります。
正常径の1.5倍の直径になると瘤と呼ばれるため、
上行大動脈の直径が45mmになればそれは瘤と言えましょう。
上行大動脈瘤が発生する理由としてはさまざまなものがあります。
解離は別項で解説するとして、
動脈硬化によるもの、
大動脈二尖弁にともなうもの、
大動脈炎・高安病・ベーチェット病・梅毒などの炎症によるもの、
マルファン症候群などの結合組織疾患に由来するもの、
先天性、その他があります。
上行大動脈瘤の直径が5cmを超えると破裂する恐れがでてきて、注意が必要です。
通常瘤の直径が6cmになれば手術が必要ですが、
その拡張スピードや背景の疾患によっては5.5cm前後でも手術が必要になることがあります。
瘤の形がいびつで破れやすいときも同様です。
上行大動脈瘤の診断は胸部レントゲンやエコーである程度めどがつきますが、
それぞれ上行大動脈瘤の診断には死角があり完全な検査法ではありません。
CTスキャンが必要です。
造影剤なしでもかなりのところまで診断がつきますから、
まず単純CTで調べるのが良いでしょう。
福島原発事故以来、CTスキャンが被ばく量の多い検査法として有名になりましたが、
私たちのところでは技師諸君の工夫によってその6分の1あるいはそれ以下に下げることができます。
それよって早期診断がより安心してできるようになりました。
上行大動脈瘤の手術は
上行大動脈を人工血管で取り換える、いわゆる上行大動脈置換術が基本です。
しかしその患者さんの状態に応じてさまざまな工夫ができます。
たとえば高齢者や全身状態の悪い方、あるいはエホバの証人の信者さんなど、
安全のためにあまり大きな手術にしたくない状況であれば、
上行大動脈を閉じるときに細くし、
さらにその外側に人工血管を巻いて大動脈を守るようにしています。
また上行大動脈瘤が大動脈弁の形をゆがめて大動脈弁閉鎖不全症が合併しているときには
デービッド手術で患者さん自身の弁を温存した大動脈基部再建をしたり、
弁が壊れているときにはベントール手術で大動脈基部をすべて取り換える手術を行います。
これらは心臓外科手術の中ではやや大きめの手術となりますが、
経験豊富なエキスパートならかなりの安全な手術となっています。
私たちはこれをさらに進めて、なるべく小さい創で手術後の痛みを減らし社会復帰をうながすよう、
ミックス手術(MICS手術つまり小切開低侵襲手術)法をつかって上記の手術を 行うようにつとめています。
右の図はミックス手術の皮膚切開の一例を示します。
お問い合わせはこちらへどうぞ
大動脈疾患のトップページにもどる



コメント