ハートポート――よりやさしい心臓手術へ

ハートポートが生まれたスタンフォード大学病院です。私も3年半、お世話になりました
ハートポートとは小切開低侵襲手術(略称ミックス手術

つまり皮膚を小さく切開し、胸骨を切らずに行う、

患者さんにやさしい手術に使う道具や方法のことです。

このハートポートをもちいて行う手術をポートアクセス手術と呼びます。


ハートポートは1990年前半にアメリカ・カリフォルニアのスタンフォード大学で開発されました。

開発者はJohn Stevensという優秀な若手心臓外科医でした。

有名なDr. Norman Shumway(シャムウェイ)先生の指揮のもと、

スタンフォードグループが力を合わせて開発した先進技術でした。

Heartport_Endoartic_Clamp_Redwood_city

 

ハートポートの原法では、

下肢の付け根にある大腿動脈から血液を送り、

そのすぐ隣にある大腿静脈から心臓までいれた脱血管で血液を抜いて人工心肺に送ります。

これはこれまでの大腿動静脈使用の体外循環と同じです。

 

さらに大動脈へバルン(風船)を入れて上行大動脈の内側からバルンで大動脈を遮断し

(これをエンドクランプと呼びます、エンドは内側という意味です)、

そのバルンの軸の部分の管から心臓を止め、かつ保護する液体を入れて通常と同じだけ安全な心停止を得ます。

さらに別の管を内頸静脈から右房経由で冠静脈洞へ入れて逆行性冠灌流を行います。

上図はハートポート社のオリジナルの解説図です。


キリンのように首の長い手術器具がハートポートMICSの特徴です心臓への操作は小さい右開胸した穴(ポートと呼びます)から専用の柄の長い手術器具をもちいて行います(右図)。

こうした当時としては画期的な、かつ徹底して心臓・血管の内側から多くの心臓手術操作を行うのがハートポートでした。

当時からこのハートポート法は多くの関心を呼びましたが、

高齢者や動脈硬化の強い患者さんがすでて多数おられた時代ですので、

脳梗塞や大動脈解離などが起こりやすいという心配があり、

必ずしも大多数の心臓外科医の賛同は得られませんでした。

 

しかしその低侵襲性つまり患者さんにやさしく、早い回復や社会復帰などのメリットは一部で評価を受け、

さまざまな改良を受けつつ今日の姿になって行ったのです。

 

たとえば脳梗塞などが起こりやすく、バルンの位置がずれると大変困るエンドクランプ法に代えて、

大動脈を外側から遮断するチットウッドクランプ法などが開発されました。

 

Da Vinciまたこのハートポートにロボットを組み合わせた方法が次第に開発されて行きました。

第一世代ともいえるゼウスというロボットもある程度試用されましたが、

性能が悪く、かなりの熟練が必要なため、

次第に使い勝手のよいダビンチというロボットに人気が集まるようになりました。

写真右は現在のダビンチ・ロボットです。

 

ロボットについてもその発展性に期待が集まるとともに、

サイズも大きく手間がかかりコストがかさみ、

それは患者さんの重い負担にもつながるという欠点から議論が続いていますが、

次世代のロボットではその欠点はある程度是正されるのではないかという期待があります。

日本では保険が適用されないため、

ロボットを使わないポートアクセスが現実には有用という考えもあります。

これなら通常の心臓手術と同様、

治療費のほとんどが保険から出され、患者さんの負担はわずかです。

 

ともあれハートポートは開発されて20年経ちますが、

さまざまな改良によって次第にそのミックス手術(MICS、ポートアクセス法)としての地位を定着させつつあるように感じられます。

Heart_dRR
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最終更新日時

  • 平成24年 4月10日(火曜日)