リウマチ性僧帽閉鎖不全症について―かつては形成不可能、今は?

僧帽弁閉鎖不全症に対して弁形成術が進歩を遂げつ図 僧帽弁形成完成図つあります。

右図は標準的な弁形成後の姿です。

高い安全性、良好な生活の質(QOL)を得る治療法として当然のことと考えられます。

僧帽弁形成術の経験が豊富なチームなら、ベストの選択枝と言えるでしょう。


ただしそれは加齢性つまり年齢からくる僧帽弁閉鎖不全症や、

マルファン症候群などの結合組織疾患によるものなどの場合であり、

リウマチ性僧帽弁閉鎖不全症の場合はまだまだ形成が難しいというのが一般的な見解です。


その理由は

1.弁葉(リーフレットと呼ば Rheumatic valvulitis grossれるひらひらと開閉する組織)が肥厚し硬くなり(右写真)、

健康人の弁のようなスムースな開閉ができない


2.弁下組織つまり弁葉を支える腱索や、

それを支える乳頭筋が肥厚したり短縮・硬化を起こして

弁葉がうまく動けない(右写真)


3.弁輪つまり弁葉の根っこで弁葉を支える土台が

硬化や石灰化を起こして修復が難しい


などのためと言われています。


たしかにリウマチ性の弁膜症は炎症という組織の変化を繰り返し、

そのたびに変化を起こして最終的には石のように硬い組織を作ってしまうという特徴があり、

弁形成術となじみにくい傾向はあります。


そもそもこれまでの僧帽弁形成術は


1.弁葉の悪いところを切り取り、残りの部分を組み立てて弁として作動するように修復する

2.腱索を人工の糸で置き換える

3.他の健常な腱索を一部もってきて、これで病気の腱索と取り換える

4.弁輪をリングと呼ばれる楕円形の道具で固定し、弁葉が弁口を閉じることができるように弁口のサイズや形を整える


などが主体でした。

つまり弁葉のかみ合わせができるようにする、

これがこれまでの弁形成術の内容でした。

弁葉そのものがだめになるリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症では、

かみ合わせができるようになっても、

弁が硬いために隙間が開いてそこから逆流することがあります。

これまでの弁形成術が通用しにくいのは、ある意味当然だったのです。


Ilm09_ad10002-sしかし若い患者さんやワーファリンや再手術は困るという患者さんにとってはリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症といえども弁形成術が必要なことはよくあります。

また病脳期間(病気で弁が壊れる年月)が永い患者さんや

昔弁形成術受けてまた悪化した再手術患者さんでも

弁が肥厚硬化し強い変化を来しているという意味で

リウマチ性病変と類似した問題があり、

こうした方々のためにも、より進化した弁形成術が求められるようになりました。


石灰化のため岩のように硬くなった弁はかつては形成不能と考えられて来ましたが、最近は変化がありますリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症などのように

弁葉や弁下組織が肥厚・短縮・硬化・石灰化した場合は


1.弁葉を安定化処理を施した自己心膜で置き換える

2.弁下組織で高度に変化した部分は人工腱索で取り換える

3.肥厚短縮した組織で弁の機能を妨げるものや不要なものは切除する

4.その他


などの方法が役立つことがしばしばあります。

これは弁形成術としては難しい部類に入りますが、

上記のテクニックに熟練したチームなら十分可能です。


個々の方法の完成度が低い 確実に人工腱索の長さが決定できることは弁形成の必須要件ですとき、

たとえば人工腱索の長さの調整が90%ぐらいの完成度のチームなら、

人工腱索を6本も10本も必要なケースでの成功率はゼロに近くなってしまいます。

さらに弁葉の取り換えなどはそれ以上のノウハウが必要です。

だからこそ熟練チームが必要なのです。


日本心臓血管外科学会等の主要学会でも施設集約化(心臓外科病院の数を減らし質を高める)の重要性が認識されるようになりました。

それにはこうした、患者さんのための高度な技術を発展させるためもありますし、

それを若手にマスターさせるためでもあるのです。


Ilm18_ab01042-sともあれリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症は、

一般の僧帽弁閉鎖不全症よりは弁形成術は難しいとはいえ

十分な可能性をもった治療法になってきています。

患者さんも単にリウマチ性というだけで簡単にギブアップせずに、

情報を集め前向きに対処されることを望みます。

Heart_dRR
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最終更新日時

  • 平成24年 4月10日(火曜日)