肺塞栓症について―予防が第一、しかしもし発症したら、、、
東北関東大地震はマグニチュード9.0という観測史上、世界最大の大地震になってしまいました。
地震そのものによる被害もさることながら、
地震によって起こった津波の被害が大変なことになっています。
被災者の方々が一人でも多く救出され、
一日も早く立ち直られることを祈ります。
またさまざまな支援活動がすでに開始されておりそれにも皆で協力したいものです。
医療の観点から対策を申しますと、
まずさまざまな状況からの救命、たとえば崩壊した建物からの救出とそれに続く治療、
怪我そのものや腎臓はじめ内蔵の治療や保護、
創の感染の予防や治療、
さらに二次的三次的な伝染病の予防など多くのことを進める必要があります。
またもともと心臓病や高血圧、
糖尿病、腎臓病、肺疾患、がんその他をお持ちの方々にはなるべく早くそれらをきちんとコントロールすることが大切です。
地震のために精神的ストレスが強く、
そのために日頃の狭心症が心筋梗塞に悪化して命を失うなどのケースが過去の地震でも報告されています。
同時にクルマの中にとりあえず住居を求める方々が近年多いためもあって、
このページをお書きしました。
狭いクルマの中ではどうしても下肢は体の下に置かざるを得ず、
下肢の静脈はうっ血し腫れぼったくなります。
この状態が続くとまもなく下肢静脈の血液が固まり、血栓となります。
いわゆるエコノミークラス症候群という、
飛行機での座位の長旅のあとで下肢に血栓ができて肺塞栓を合併し命を落とす状況と似ています。
この血栓が歩くときなどに静脈壁から外れますと、
流れに乗って行きつくところは心臓経由で肺になります。肺塞栓症です。
血栓が大きかったり多量ですと肺の血流がうんと減ります。
健康な方でも肺の血流が50%以上減れば危険な状態となります。
まして日頃から心臓や肺の悪い方などではより危険な、命にかかわる事態です。
こうした状況で息苦しさや胸の痛みなどがあれば、
直ちに病院なり医師なり看護師なりお近くの方にご相談下さい。
状態によっては突然死が迫っていることもあります。
診断は患者さんの状況とくにクルマのなかで何日か過ごしたなどの状況を聴き、
それをもとにしてCTや肺血流スキャンなどを調べます。
肺動脈の中に大きな血栓や血流の欠如があれば肺塞栓症の診断は確定します。
肺塞栓症の治療は脱水を治し、
全身状態を改善させつつ、できるだけ早く血栓を薬で溶かします。
それが効かない、あるいは血圧や血液中の酸素が下がり、危篤状態の場合は手術で治すこともあります。
肺塞栓症の手術の場合は通常の心臓手術と同様、全身麻酔のもとで、
胸の真ん中を縦に切り、胸骨という骨も真ん中で切って心臓に達します。
体外循環(人工心肺)を開始し、主肺動脈や右肺動脈を切開してそこにある血栓を摘除します。
急性肺塞栓症の場合は血栓はまだ暗赤色でゼリーのようにドロっとしています。
ピンセットでつかむとちぎれるほど柔らかいものです。
これをうまく取り去り、ちぎれた部分が無いように、吸引管で肺動脈の中を吸い取ります。
私の経験では煮込みうどんの煮込み過ぎたものをちぎれないようにそっとつかみながら順々に引き出していく、
うどんは長い長い形で、これを全部抜き去ると心臓は大きく改善します。
時間が経った、慢性肺塞栓症ではかつての血栓が肺動脈やその枝の内側にこびりついた状態となります。
手術ではそのこびりついた血栓をひとつずつ丁寧に取る必要があります。
いざという時にはこのように手術が患者さんの命を救いますが、
できればこの肺塞栓症は予防するのがベターです。
そこで予防法ですが、やはりクルマなどの座った姿勢で何日も生活することは危険です。
しかしやむなくそうしておられる状況でできることは、
まず定期的、できれば2時間ごとに歩いたり、
下肢の屈伸をやったり、
つま先でものを押し下げる運動をするなどして下肢の静脈に血栓が生じないようにすることです。
同時に、水分を十分に摂り、血液をサラサラにすることが大切です。
スポーツドリンクは糖分と塩分が含まれるため、
吸収が良く、かつその水分を体内にとどめやすいため、有効です。
ただし糖分は糖尿病の負担になることがあり、
塩分は高血圧を悪くすることがあるため、
こうし た病気をお持ちのかたはお茶やミネラルウォーターなどと交互にあるいは時々飲むなどの注意が必要です。
また同じクルマの中でも下肢をなるべく上げるようにしたり、
弾力ストッキングをつけて下肢の静脈を絞るのも有効です。
しかしそれでも夜はなるべく水平なベッドなり畳なりで寝るのが安全上勧められます。
被災者の方々のみならず、
それ以外の方々にもこうしたことを知って頂ければもしもの地震の際に役立つと思います。
ともあれ被災者の方々の一日も早いご快復を祈ります。
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