①d 僧帽弁狭窄症とは―放置すると危険なことも。弁形成への道が、、
僧帽弁狭窄症とはその名のとおり、僧帽弁が開きにくくなり、狭くなる病気です。
そのために血液が僧帽弁ごしに流れにくくなり、左房の圧が上がります。
そこからさまざまな問題が起こります。
まず左房圧が高くなるため、肺からきれいになった血液が心臓に戻れなくなり、
肺がうっ血します。
そのために運動時に息切れが起こり、
悪化すれば安静時にまで息苦しくなったり肺に水が溜まります。
また高い左房圧のため左房が拡張し、次第に左房の構造が壊れます。
そして心房細動という不規則な不整脈が発生します。
心房細動のため左房の内側での血液の流れがよどみ、
血栓ができ、そのため脳梗塞などの重い病気が二次的に発生します。
左房の拡張による血液のよどみが血栓をさらにできやすくします。
脳梗塞が大きかったりやられた部位が運悪ければ命を落とすことも あります。
肺うっ血のため風邪をひきやすくなり、
またこじらせて気管支炎や肺炎を合併しやすくなります。
そのために命を落とす方も少なくありません。
高い左房圧は肺うっ血を介して高い肺動脈圧を引き起こします。
これを肺高血圧症と呼びます。
重くなれば右心不全、両心不全をおこし、さらには肝不全などの原因にもなります。
三尖弁閉鎖不全症の原因は肺高血圧または心室中隔を介しての左室直接作用であることが知られています。
ともあれ僧帽弁狭窄症はいったん重症化あるいは二次的問題が合併すれば予後が悪なる病気です。
そうした状態になるまでに手術することが勧められています。
僧帽弁狭窄症の治療は軽症には内科的、保存的治療ですが、
いったん狭窄が高度となり症状が悪化したりさまざまな二次的問題が発生すれば手術治療が適応となります。
一般には人工弁を用いた僧帽弁置換術MVRが選択枝となります。
その場合、弁を切除するときに乳頭筋を温存すれば、術後の左室破裂や心不全が回避しやすくなり、
しかも手術後の心室のパワーアップが図れるため、勧められる方法です。
なおたまたま弁葉が柔らかく保たれており、前尖と後尖が交連部で癒合しているだけであれば、
僧帽弁交連切 開という、ある種の僧帽弁形成術が施行されます。
さらに近年は20代ー40代の若い患者さんを中心に、弁形成術を希望されることが増えたため、
私たちのチームでは弁葉を患者さん自身のやわらかい組織で置き換えて弁形成を行うケースが増えました。
手術の難易度は高いですが術後のQOLつまり生活の質も高く、
社会ニーズにも応えることになり、
今後の展開が期待される手術です。
また心房細動に対してはなるべくメイズ手術を併用して除細動に努めています。
僧帽弁狭窄症の患者さんとくに病脳期間が長い場合心房細動をおこしやすいことが知られています。
私たちはメイズ手術の生みの親であるセントルイス大学のコックスCox先生のデータをもとに、
完全メイズ手術を行うことで除細動率を高めて来ました。
さらに左房サイズが除細動率に大変重要であるというEBM(証拠にもとづく医学)情報をもとにして、
2000年代に入ってまもなく、心房を小さくする心房縮小メイズを考案し、
除細動率をさらに高めました。
これらの努力のおかげもあって、僧帽弁狭窄症に対する手術治療成績は改善の方向にあります。
さらに僧帽弁狭窄症でも僧帽弁形成術ができるよう、工夫を進めています。
自己心膜や人工腱索(糸)を使用して形成を完遂するのはその一つです。
同じ原因をもつリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症への弁形成のノウハウが役に立っています。
今後の展開が期待される領域です。
このように僧帽弁狭窄症の患者さんの予後は、QOL(生活の質)とともに、今後さらに改善するものと期待されます。
患者さんには、上記の二次的合併症がおこるまでに弁膜症に詳しい専門医の診察を受けて頂くようお願いしたく思います。
とくに脳梗塞が起こるまでに治療を開始することは大切です。
手術のご質問があるときはこちらへどうぞ。
メモ1: 僧帽弁狭窄症の治療指針ガイドライン。
ガイドラインをもとにして治療計画を立てることが患者さんにもっとも有利な結果を導きやすいのです。
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