4b) 腹部大動脈瘤の手術について―もっとも確実な治療法、しかし、、
腹部大動脈瘤(略称AAA)の直径が通常約50mmになれば手術の適応となります。
「手術の適応」とは、「手術しない場合より手術する場合の方が明らかに安全です」という意味です。
これは瘤の直径が50mmを超えれば破れる確率が高くなることと、
腹部大動脈瘤の手術死亡率が1%を大きく下回り、ゼロに近いという安全性を勘案してのことです。
腹部大動脈瘤が破裂してからの手術死亡率は格段に上昇します。
病院にたどり着いた時にはすでにショック状態になっていたり心臓が止まったりして全身が壊れているからです。
破裂するまでに手術することが大切です。
とくに高齢者の患者さんの場合、これは大切です。
出血しないようにしておいて、瘤を切開し、
止血ののちサイズが 合致する人工血管を縫合して瘤を人工血管で置き換えます。
手術では腎動脈が分岐するところより足側の腹部大動脈瘤では、腎動脈の足側を遮断しますが、
瘤がもっと頭側に進展している時には腎動脈の頭側を遮断し、なるべく短時間で吻合して遮断解除するようにしています。
これは腎臓を守るためです。
私たちの腹部大動脈瘤手術の特徴は、普通の瘤だけでなく、以前に他院で腹部手術や瘤手術された患者さんが何年も経って再度悪化した再手術例が多いことです。
こうしたケースではお腹の中が癒着しているため、丁寧に剥離し、それから手術の核心部分へと進むため、手間暇がかかります。
しかし心臓での重症例・再手術例の経験を活かして患者さんの期待に応えるためにがんばっています。
状況によっては後腹膜アプローチといってお腹から瘤に行くのではなく、
斜め後ろから瘤に行く方法をもちいて、お腹の中の剥離なしで手術することもあります。
腹部大動脈瘤の人工血管置換手術は安全性も高く、長期間の安定性も良いため現在も重要な標準治療法となっています。
心臓のミックス手術(MICS)の方法を導入し、お腹にも小さい創で手術をおこなうようにしています。
ただし瘤の部位や形態・状況あるいは患者さんの年齢・体力によっては、やや不完全で長期成績が未知数のステントグラフト(EVAR)を用いて、
低い侵襲(体への負担)の治療をすることが増えつつあります。
たとえば超高齢者とか全身麻酔も心配なほど肺が悪い患者さんや、
その他体力に懸念があるようなケースですね。
(手術事例をご参照ください)
このステントグラフトなら手術の日から食事が再開でき、
翌日からはほぼ普通の生活に戻れ、社会復帰もきわめて早くなります。
今後はその進歩によりこちらが標準治療になるかも知れません。
要は患者さんに有利な方法を選ぶのが良いと考えます。
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