4)Q: PCIと比べて心臓手術(冠動脈バイパス手術)の利点は?

Q: カテーテルによる冠動脈治療(PCI)と比べて傷痕が残る、回復に時間がかかるといった心臓外科手術(冠動脈バイパス手術)の利点は?

オフポンプ冠動脈バイパス手術の一例を示しますA: 分かりやすく言えば、外科手術(冠動脈バイパス手術)のほうが長期成績つまり安定度が良いということです。 血管内に ステントを埋め込むPCIバイパス手術に比べて傷も小さくやさしい治療に見えるでしょうが、長期 的には、生存率などで外科手術のほうが良い成績を収めているのです。

2008年1月には多数の血管に病変がある重症例について、外科手術の優位性を示すデータが米国の超一流誌 で発表されました。  使用する部位にもよりますが、人間の体にとって「異物」であるステントの埋め込みは一 時的に良くなっても、長期的には厳しいことを心臓血管外科医は経験的に学んでいます。 

冠動脈ステント例えば、弁膜症の外科手術で用い る機械弁(金属)には40年以上の歴史がありますが、どん なに丁寧に長期ケアをしても脳梗塞が毎年1~2%の割合で起こります。だから体になじむ弁形成手術や生体弁での弁置換を行うことが増えたわけです。血行再建療法では、体となじまない異 物であるステント(金属)よりも、自らの生きた血管を用 いる冠動脈バイパス手術のほうが予後や安全性の点で優 れているのです。まして将来もしものがん手術やけがの場合、出血を増やす薬を飲まずにすむバイパス手術後のほうが安全性は高いのです。

たとえばPCIでこの5年間で主流になった薬剤溶出性ステントでは、その治療後は強力な血栓予防のお薬(抗血小板剤と言います)を延々と使う必要があります。当初は6カ月間だけと言われていましたが、薬を止めると血栓ができて心筋梗塞で急死する患者さんが出現しました。そのため薬使用は1年とか2年と言いながら現在は無期限にこの薬を使う方向にあります。

するとさまざまな二次的問題が明らかになってきています。たとえば大腸ファイバーでせっかくポリープ(将来がんになります)を見つけてもそれを大腸ファイバーで他の患者さんのように簡単な切除はしづらいです。切除のあと出血が止まらなければ大問題になるからです。大腸ファイバーの先生は薬剤ステントの責任は取りたくありませんし、薬剤ステントを入れた先生は大腸ファイバー治療での責任は取れません。かといって抗血小板剤を切ってヘパリン点滴などに切り替える場合の安全性は不明です。

こうした問題が発生し相談を受けるようになりました。冠動脈バイパス手術ではこうした問題はほとんどありません。 

ただし、誤解のないように言えば、PCIをはじめとする内科的治療の利点はたくさんあります。同じPCIで も超一流のセンターや内科医がやれば結果も違ってくる場合もあるかも知れません。黒か白かではなく、その患者さんにと って最善の策は何かを一緒に考えて決める姿勢が大切と思います。薬剤ステントは入れた分だけ患者さんが得をするわけではないことや、たとえばがんの心配のある方や将来何かの手術や怪我の心配のある方には冠動脈バイパスが有利なケースもあり得るわけです。

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最終更新日時

  • 平成22年 7月26日(月曜日)