弁形成術について、概説
弁形成術とは
弁形成術とは文字どおり心臓の弁を形成して修復・修理し、弁の機能を元の正常な状態にする手術です。

弁形成術は多くの場合、弁置換術つまり人工弁に取り換える手術と対比して語られます。(写真左は弁形成術、写真右は弁置換術のものです。)
つまり弁形成術は弁置換術の弱点が少ない、より優れた手術というわけです。弁置換術のばあい、それが機械弁(金属の弁)の場合は一生涯ワーファリンという血栓予防のお薬を毎月血液検査を受けながら続ける必要があり毎年1-2%の割合で脳出血や脳梗塞が起こりますし、生体弁(ブタやウシの柔らかい弁)の場合はワーファリンは不要ですが、若い患者さんでは10年ぐらいで壊れて再手術が必要という懸念があります。その一方、弁形成術の場合はワーファリンも再手術も不要な場合が多く、自然で優れているのです。
ただここで注意が必要なのは、弁形成術が弁置換術より優れているのは、①主に僧帽弁の 場合であり、大動脈弁はまだ未知数の部分が多いこと、そして②弁形成術がばっちり決まる場合の話であるということです。
僧帽弁形成術は昔からさまざまな努力がなされてきましたが、現代のものは1970年代のフランスのカーパンチエCarpentier先生にそのルーツを見ることができます。その後デュランDuran先生やデービットDavid先生はじめ多数の心臓外科医の臨床成績が発表され、かなり確立した感があります。
一方、大動脈弁形成術はデュラン先生やその後川副先生らのお仕事が発表され、改善の方向にはありますが、僧帽弁ほど多数で多様で長期のデータが蓄積されているとは言えず、まだまだ慎重に進めるのが適切と考えられます。たとえば60歳以上の患者さんについていえば、生体弁では18年前後の耐久性が発表されていますが、弁形成ではそれだけ持つ保証はまだありません。将来大動脈弁に対する弁形成術がより洗練され、経験がより蓄積されれば僧帽弁の形成術と同じ評価になるかも知れませんが。また10代などの若い患者さんの場合は生体弁は10年以下しか持たないため、弁形成術のメリットが大きくなる可能性があります。
なおご高齢の患者さん、たとえば80歳を超えたり体力のない方など の場合、生体弁が20年前後持つと予測される状況の時、とくに弁形成が複雑高度なものになるケースでは前向きに生体弁による弁置換を行うこともあります。その方が確実に短時間で完了するからです。要はその患者さんが一番得する方法を、その患者さんの日々の生活の視点から選ぶことと考えます。
逆に若い患者さんなどの場合は弁形成のメリットが大きく、生体弁の弱点がやや目立つケースが多く、安全を確保しつつ万難排して弁形成術を完遂することが多いです。
三尖弁の場合はほとんどの場合、弁輪の拡張が原因であるため、弁形成術ができます。ペースメーカー由来の三尖弁膜症では弁形成術が難しいと一般に言われていますが、私たちは僧帽弁形成術で培ったノウハウを応用し工夫して弁形成術を完遂しています。三尖弁では弁置換術の長期生存率があまり良くないため、弁形成術のメリットがいっそう光るからです。
そうした現実を考え、弁形成術を適切に、そしてより洗練された形で提供することが心臓外科医にとって重要と思います。
1. 弁膜症 のページにもどる


