ご高齢の患者さんについて

人間は誰でも老いて行きます。高齢者になればなるほど誰でも病気を多くもつようになります。心臓も冠動脈、弁、大動脈のいずれも、高齢ほど病気が起こりやすくなります。

心臓や血管の病気の場合は手術でそれを治せば、また元気に暮らせることが多いため、大きな意義があります。高齢者は社会の恩人でもあります

最近の医療費抑制の風潮のなかで、高齢者にお金をかけるのは社会の大きな負担だとか、 お金がもったいない、などと言いたげな意見を耳にすることがあります。それは年老いて仕事も社会貢献も昔ほどできなくなった人たちの今の姿を見るとそう短絡する向きもあるかも知れません。しかしその人たちが家の内外で長年働き、税金を払ってきた、あるいは社会貢献してきた軌跡を考えれば、役立たなくなったとたんに切るという発想で、恩義礼節を重んじてきたこの国もここまで堕落したかと思われるような話です。

年齢と体力などを考慮してその方がこなせる治療をデザインすることが大切です高齢者の心臓患者さんの弱点は肝臓・腎臓・肺(もちろん心臓も)をはじめ全身の力が落ちているところにあります。また長い人生の中で動脈硬化や生活習慣病あるいはがん、肺疾患その他さまざまな病気にやられた、あるいは乗り越えた後の状態で、余裕が少なくなっています。

心臓や血管の手術はもともと大きい手術が多いため、体への負担も大きく、全身の弱さを考慮して手術や治療を進めることが大切です。

狭心症(冠動脈の病気)では人工心肺を使わない、自然状態で手術するオフポンプバイパス手術が体への負担を小さくするのに役立ちます。

弁膜症手術ではできるだけてきぱきと、確実に、各操作を一発で決めることが肝要と考えて年齢によって適切な手術、やさしい手術の内容は微妙に異なることがあります。オーダーメイド治療のひとつとも言えましょういます。弁形成が理想的ですが、多少でも不確実要素があるような複雑弁形成術の場合は、あえてそれよりも体力のない高齢者にやさしい生体弁をもちいることもあります(手術事例 ご高齢患者さん)。たとえば80歳を超える高齢者患者さんでは生体弁は20年は持つと考えられ、心機能を落とさない工夫を加え、所定時間内で確実に治せるなど、ケースバイケースで患者さんに有利なことがあります。

大動脈瘤や大動脈解離の手術でも、なるべくコンパクトな手術を狙い、高齢者の体への負担を減らすようにしています。

高齢者患者さんの手術・治療では、単に手術の工夫のみならず、手術後の治療も患者さんの体の状態にあわせた工夫をします。たとえば肺が悪いあるいは弱い方が高齢者には多いため、呼吸のサポートをちょくちょく行い、患者さんの体に休息を与え、状態の改善を図るなども行います。腎臓が頼りない状態の場合は一時的に透析類を併用して、早い回復を図るようにしています。

安全管理は患者さんのための安全を管理するという意味です最近の風潮とくに国公立病院などを中心に、高齢者はハイリスクだからと手術をやらせない傾向が見られます。安全管理というキーワードで皆反対しづらい状況のようです。しかし手術を断られた患者さんはどうなるのでしょうか。また簡単な病気の患者さんだけ手術してもそれが病院や医療の社会的責任を果たしたといえるかどうか、疑問を持ってしまいます。こうした形でも医療崩壊が進んでいるのは残念なことで、それだけに、一層、高齢者患者さんを何とか工夫を重ねて救命する努力を続けたく思います。

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最終更新日時

  • 平成22年 3月12日(金曜日)