6) ステントグラフト(EVAR)はどのように役立つのですか―画期的な治療法
循環器内科や連携病院の先生方と協力して行うステントグラフト治療(略称EVAR)も威力 を発揮しつつあります。
これまで大動脈瘤の手術には胸やお腹を切って中へ入り、
大動脈瘤の部分を人工血管で置き換えることが主流でした。
しかし大動脈瘤の場所によっては大きめの皮膚切開が必要なことがあり(たとえば胸腹部大動脈瘤など)、
患者さんの体への負担(侵襲)は小さくはありませんでした。
そこで開発されたのがステントグラフトです。
1990年初頭ごろ、スタンフォード大学が世界のトップグループとして開発と臨床試験を行っていたころからのお付き合いです。
このステントグラフト法はいわゆる皮膚を切って手術をすることなく、
カテーテルという管(くだ)を使って折りたたんだ人工血管を動脈の内側で広げて固定するため、
人工心肺なども不要で、体温を下げる必要もなく、
輸血もほぼゼロにでき、
高齢者や他疾患を持った重症患者さんではとくにメリット が大きいものです。
(図で胸腹部大動脈から腹部大動脈を除いた部分です)。
枝の動脈の処理が不要で手技が簡単なのです。
ステントグラフト(EVAR)は内側から大動脈に内張りをつけるため、
大きな動脈の枝があると少々不便なのですが、
下行大動脈にはそうした枝がなく、
ステントグラフトは構造上、手術がやりやすいからです。
ステントグラフト法なら下行大動脈瘤の手術のあとの脊髄マヒ
(左右の下肢が動かないなどの対麻痺)がほとんど起こりません。
通常手術と比べて脊髄の虚血時間が短いことや、
術中・術後の血圧が従来より高めに維持しやすいために
脊髄の虚血が悪化しないことなどが考えられています。
命を支えるための大切な動脈枝がある上行大動脈や弓部大動脈には
ステントグラフトはそのままでは適しません。
しかし近年は枝に前もってバイパスをつけておき、
そのあとでステントグラフトで元の枝を含めた弓部大動脈を全部内張りつける、
デブランチ法が進化しています。
また真性動脈瘤で中に血栓があるときは、
ステントグラフトでこの血栓が飛び、
脳梗塞などの重い合併症を起こすことが少なくありません。
腹部大動脈瘤でも同様にステントグラフトが活躍する場面が増えました
まだ長期間の安定性は不明で、今後の課題ですが期待される治療法です。
また前述のエレファントトランクで下行大動脈瘤が安定しない場合、
二期工事としてカテーテルで血管の内側から瘤を治し、安定させることができるようになりました。
こうした追加治療にもステントグラフト法は優れています。
なおステントグラフトができない形・状況の場合は外科手術との共同作業で治療を完成させることもあります。
ハイブリッド手術と呼ぶこともあります。
たとえば上記の弓部大動脈瘤や、
胸腹部大動脈瘤などのもともと難しかった病気に対しても
デブランチングと呼ばれる、前もって手術で瘤の枝にバイパスをつけておいてからステントグラフトで安心して瘤を閉鎖するという方法が実績を上げつつあります。
このようにステントグラフト(EVAR)はまだまだ改良の余地はあるのですが、
他の内蔵が弱く体力が無く手術に耐えられない患者さんなどを中心に成果を上げています。
いずれ長期の安定性がはっきりと確立した段階で若い患者さんたちにも応用されることでしょう。
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