5) 大動脈解離の手術はどのようにするのですか―人工血管を活用し
大動脈解離 のなかで上行大動脈がやられるA型解離の場合、殆どは緊急手術となり、上行大動脈 ないし弓部大動脈を人工血管で置換します。
左図は急性大動脈解離によく使う方法で近位弓部大動脈置換手術(ヘ ミアーチ置換)といいます。
つまり弓部大動脈のうち心臓に近い部分までを置き換えるわけです。
しかし解離が弓部大動脈におよび、そこにエントリーつまり解離開始部があれば、弓部大動脈全置換術を行うこともあります。
脳と心臓をうまく守りつつ手術を進めて行くのは真性大動脈瘤の場合と同じです。
患者さんの年齢や体力、手術前の状態・状況を考え、もっとも適した手術法を使うようにしています。たとえば80歳以上の高齢者の患者さんや、全身の血管が動脈硬化で悪い方たとえば閉塞性動脈硬化症ASOがある方や、手術まえに内蔵がかなりやられていると考えられる患者さんではリスクをできるだけ下げるよう、近位弓部大動脈置換(ヘミアーチ置換)にとどめることもよくあります。患者さんが生きる可能性を最大限に引き上げることを考えているわけです。
大動脈解離の場合は組織が脆弱なため、より丁寧な手術操作を行います(手術事例 2)。必要に応じて弱った大動脈壁を強化する糊を使うこともありますが、この糊も完璧なものではないため、必要最小限の使用にとどめています。
大動脈の基部(根元の部分つまり大動脈弁に近い場所)が解離するとしばしば大動脈弁閉鎖不全症が起こります。弁が支えを失うからです。
これもあって緊急手術が必要になります。
解離によっておこる弁閉鎖不全は一般に大動脈弁形成手術ができる場合が多く、こ れによって患者さんへの体力的負担も少なくなります。
大動脈基部が解離で破壊されている場合は大動脈基部再建(ベンタール手術やDavid手術など)を行います。
年齢や体力や全身状態を考えて、なるべくコンパクトな手術にまとめるようにしています。
前任地・京大病院では米田着任以来、大動脈解離の患者さんを20名以上のほぼ全員救命できており一層の治 療法の改善につとめています。
手術前に救急外来にて心臓が停止した一例は残念ながら救命できませんでしたが、あと半時間 早く手術室へ搬送できれば多分救命できたであろうという反省からより態勢を磨く努力をしています。
名古屋ハートセンターでも超高齢患者さんで手術直後大動脈基部が再解離した方を例外として全員救命できており、普通は治せる、というところまで来ています。
病院の足腰が強く、必要な手術を必要なときに行えるため、治療成績の一層の向上が期待されています。
下行大動脈がやられるB型解離の場合は内科による お薬その他の穏やかな治療が勧められますが、次第に拡張して瘤になると破れるまでに手術が必要となります。
破れる前なら手術の成功率は高いですが、いったん破れてしまうと全身の状態が急速に悪化するため、手術まで に死亡したり、手術を乗り切る体力がなくなってしまうという困ったことになります。
そのため丁寧なフォロー(定期健診)が大切になります。
メモ: 急性大動脈解離A型は数ある心臓血管の病気の中でも一番急ぐ病気のひとつですが、ある意味、一番頑張りがいのある病気でもあります。
手術に間に合えば、特殊なケース以外はほぼ元気になれます。
キーは早期診断です。
その一方、病院に来られ、手術に必要なCTなどの検査中に心臓が止まり救えなかったという無念の経験が何度もあります。
つまりもうあと1時間早く来院して下されば結果は違ったかも知れないというケースです。
そこで患者さんにもご家族にも、開業医の先生方にも、強い胸痛や背部痛があれば、遠慮なく心臓血管外科へご連絡されることを望みます。
中でも胸痛に加えて手足の血圧や脈の強さが違えば一層解離の疑いが強くなります。
聞くは恥ではありません。
お問い合わせはこちらへどうぞ
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