5) 心臓再手術(再開心術) ②どんな問題が?
Q: 再手術ではどんな問題があるのですか?
再手術は一度目の手術のために心臓と周囲の組織が癒着したり変化を起こしている場合も多いです。
それらの癒着を安全確実にはがす必要があります。
癒着をはがした後はにじむタイプの出血(ウージングと呼びます)が起こりやすいため、より丁寧な止血が必要です。
このため、安全な胸骨再切開と、剥離には電気メスとハーモニックメスをもちいて「乾いた」術野の確保をモットーとしています。
中でも前回手術で心膜(心臓の周囲にある袋状の膜)を閉じられていない場合は、心臓が直接胸骨に癒着していることがあり、胸骨をのこぎりで切る際に心臓を傷つけない技術が求められます。
私たちはトロントのDavid先生の方法で安全に胸骨再切開ができる態勢を確立しています。
先日、3回目の手術を希望して来られた連合弁膜症の患者さんは、前回手術のときに右室を胸骨と一緒に大きく切られた経歴がありましたが、この患者さんも無事にトラブルなく手術完了しました(心臓手術事例ー準備中)。
再手術のなかでも前回手術が冠動脈バイパス手術で、その時のバイパスグラフトが開存している場合、そのグラフトを傷つけると危険なことが多いため、注意と経験・技術が必要です 。
人工弁の再手術では、もとの人工弁をただ切除すると、新しい人工弁の縫い代が不足することもあります。
それらを考慮した切除が必要です。
このことはとくに再々手術など、手術回数が増えるほど大切です。
しかも再手術の患者さんは長年月の間に心臓に無理がかかったりしている場合が多いため、初回手術の患者さんよりも心臓や他内臓(肝臓や腎臓、その他)が弱っていることも多く、重症の方が多いため、より的確な治療が要求されます。(手術事例 僧帽弁の再々手術)
状態の悪い患者さんでは手術を開始してまもなく血圧が低下したり、不安定な状態になることがあります。
一回目の手術であれば直ちに体外循環を開始すれば落ち着きますが、再手術では直ちにそれができないこともあります。
それ用の対策を持つことが必要です。
それらのため再手術は心臓外科医の力量がはっきりと
現れる領域です。
豊かな経験と実績のある外科医・チームでは再手術は一回目と大差ないほど安全に行えますが、熟練していないチームでは死亡率が高まります。
私達は再手術を以前から重要種目の一つとしており、3-4回目の手術でも安定した成績を出しています。
韓国から来られた4回目手術の3弁置換手術の患者さんは当時の学会(2000年)でも発表致しました(左図)。
最初の2回は米国にて受けておられました。
名古屋ハートセンター開設から1年余りが過ぎましたが、全国から再手術(再々手術、再再々手術も)の患者さんが来て下さるのは光栄なことです。
こうした患者さんの中には肝臓や腎臓も弱っていることも多く、それらへの対策が必要ですし、肝臓が弱い場合やうっ血しているときには出血傾向(血が固まらない)があり、出血対策も一段と強化する必要があります。
これらのためもあって心臓再手術は普通の手術よりはリスクが高いのですが、経験がものを言う領域でもあり、全員軽快退院記録を伸ばせるよう全力を尽くしています。
余談ながら、このように手間も暇もかかり、リスクも一回目の手術よりも大きい再手術(再開心術)ですが、保険点数は一回目の手術とおなじです。
心臓再手術は病院にとっては経営上は多少とも重荷になりますが、私たちは心臓血管の専門病院として患者さんを守るという誇りをもって再手術・再開心術に積極的に取り組んでいます。
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