4) 弓部大動脈瘤の手術について―脳も全身も守る必要が

Q: とくに弓部大動脈瘤の手術について、どのように行うのですか?

ステップワイズ法で行う弓部大動脈全置換術のシェーマです胸部大動脈瘤の中でも弓部大動脈瘤は比較的大きな 手術治療が必要です(左図、弓部大動脈全置換手術)。

 

かつては3つの大きな枝をひとまとめにして再建、つまり人工血管に連結する術式が欧米を中心にして広く行われましたが、現在は枝付きの人工血管で枝ごとに連結(吻合)する手術手技が広まりました。

 

私たちはそれに加えて、これまで、弓部A313_042大動脈瘤に対して脳こうそくの予防や脊髄の保護にとくに力を入れArch First (アーチファース ト)テクニックという方法を主に用いて良好な成績を出して来ました。

 

こうした研究をさらに進めてステップワイズ・アー チファースト法という確実な弓部大動脈再建方法を工夫しておこなっています(手術事例 1)。

要するに下行大動脈との吻合が奥深くて比較的難しい場合などに、裏返した人工血管をいったんその中に入れてそれらを縫ってつなぐため、吻合部をつねに一望しながら確実に吻合できるのです。

この方法のメリットは脳へいく動脈を触らないため脳梗塞が起こりにくいこと、そして低体温のため脊髄が守られやすいことなどが挙げられます。

弱点としては体温をある程度下げるため手術時間がやや長くなることが挙げられます。

 

A313_032脳こうそく等のリスクが比較的低いケースでは選択的脳灌流 という方法をもちいて、やや高めの温度で、より止血に有利な方法で、より短時間で、より少ない輸血で手術します(手術事例2)。

 

これにより弓部大動脈全置換術といえども通常は4時間前後でオペできるようになり、患者さんの体力温存が図りやすくなりました。

この数年間はこちらの方法で手術することが弓部大動脈瘤の標準術式となりました。

しかし必要があれば、その患者さんにより適した方法が選べるというのがベストと思います。

 

弓部大動脈全置換術にエレファントトランクを加えるとこうなります弓部大動脈瘤は下行大動脈にまで病気が広がっていることもあります。

そのためさまざまな工夫がなされて来ました。

左図は弓部大動脈瘤が下行大動脈のより遠位部(お腹側)に広がっている ときの方法のひとつです。

 

象の鼻のような人工血管をつけるためエレファントトランク と呼びます。

そのままで安定することも多いのですが、後日遠位部にさらに治療を加えること もあります。(手術事例3)

 

もし遠位部つまり下行大動脈にも手術が必要になれば、かつては左開胸つまり左の胸を開けて人工血管をエレファントトランクにつなぐ手術操作を行いましたが、最近はカテーテルをもちいて折りたたんだ人工血管を内側から広げてこれに連結する、ステントグラフトという方法が増えつつあります。

患者さんによりやさしい治療を目指して改良を重ねているわけです。

 

慣れたチームでは外科手術成績が成功率95%前後まで改善したとはいえ、弓部大動脈瘤の手術は簡単なものではありません。

しかしこれらの患者さんはほうっておけば早晩瘤が破裂することが知られており、いったん 破裂すれば死亡率はほぼ100%となるため、かなり重症でも様々な工夫を重ねて、できるだけ安全性を高めて手術治療をしています。

着実に進歩しており、より多くの患者さんたちが助かり、今後の展開が楽しみになりつつあります。

       Heart_dRR
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最終更新日時

  • 平成26年 10月19日(日曜日)