4) 冠動脈バイパス手術の安全性は?―99%を超える安全性

オフポンプ冠動脈バイパス手術の一例を示します。最近はとう骨動脈や胃大網動脈を使うことは減り、静脈グラフトの復活傾向もあります。しかし幅広い選択肢はさまざまな状況で役立ちます。私たちの手術死亡率は1%を下回ります。

さまざまな工夫を重ね、名古屋ハートセンター開設から3年近く、バイパス手術では死亡率ゼロです。


90歳前後の高齢の方や、いろんな病気、たとえば

慢性腎不全・血液透析
慢性閉そく性肺疾患COPDなどの肺の病気 あるいは
カテーテル治療(PCI)不成功例や再狭窄例
脳卒中
がん

などを持った重症の方、危険な状態で緊急手術を必要とする方や再手術の方も含めて、医学的に手術が必要な方には逃げることなく、どしどし冠動脈バイパス手術CABGを行っています。

こうした重症の患者さんを含めても低い死亡率を達成できています。


ただ以前のように7年間死亡ゼロなどという状況から少し変化があり、前任地の京大病院で最後の1-2年で助けられなかった患者さんがあったのは、再生医療しか手がない患者さん(以前から心臓以外の重い病気がありました)や再生医療のため来院され、その再生医療さえ適応にならなかった重症患者さんでした。

その後はこうした特殊な患者さんはうんと侵襲(体への負担のこと)の低いバイパス手術や別の治療法を検討して死亡率ゼロを維持するようにしています。


この中でオフポンプ冠動脈バイパス手術つまり体外循環を使わない方法は大変役立っています。

重症や高齢の患者さんほど体外循環の害を避ける意味が大きいからです。


上記のように重症患者さん、とくに慢性腎不全慢性血液透析を受けている患者さんでも冠動脈バイパス手術CABGの安全性は維持できています。


手術事例: 透析歴30年の患者さんの手術経験もあり、冠動脈は石灰化でカチカチになっていましたが、内胸動脈グラフトはきれいで、それを工夫して吻合(縫い付ける)し成功しました(写真左)。


その血液透析の患者さんの術中高速エコー所見です。冠動脈(下半分)は石灰化のために光っていますが、内胸動脈グラフト(上半分)はきれいです術中高速エコーで吻合部を見ますと(写真左下)石灰化で輝度の高い冠動脈と比較的正常の内胸動脈が映っていました。

冠動脈バイパス手術CABGの低い死亡率の原因として

1. 熟練したプロフェッショナルチームによる手術、


2. 人工心肺(人工の心臓と肺で普通の心臓手術で はこれを使います) を使わない オフポンプバイパス手術(略称オプキャブ)の積極的かつ正しい使用(虚血性心疾患・手術事例1 オフポンプバイパス手術)、


3. 手術前、手術中、手術後の徹底した安全管理。合併症の予防と発生時の早期治療。

などがあげられます。


また冠動脈バイパス手術とくにオフポンプバイパス手術の特長(術後、強い薬が不要、安定性も良い)を考え、がん患者さんなど他治療や他手術が将来必要な患者さんにも積極的に手術を行っています (手術事例 がん患者さんに対するオフポンプバイパス手術


メモ: ステントとくに新型の薬剤溶出ステントとバイパス手術のすみ分けは、その施設や医師によって温度差があります。

冠動脈の中ほどの普通の狭窄であればステントを選択する先生がほとんどです。

左冠動脈の根っこに近い部分が複雑にあちこち狭くなっているタイプなどではバイパス手術を有利とする先生が増えます。


それが重い糖尿病血液透析の患者さんならバイパス派はさらに増えます。

中でも患者さんがまだ若く、あるいは仕事やスポーツなどをどしどし楽しみたいなどの状況があればさらにバイパスが有利です。

そういう形で心臓や体の状態さらにライフスタイルまで勘案して納得の行く選択をするのが良いでしょう。


最近の欧米の大規模臨床研究(Syntaxシンタックストライアル)でも、重症冠動脈疾患での冠動脈バイパス手術のカテーテル治療(PCI)に対する優位性が示され、ガイドラインでも冠動脈バイパス手術が第一選択となりました。

Syntaxトライアル4年では冠動脈バイパス手術の患者さんのほうが長生きできることが示されました。

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最終更新日時

  • 平成24年 1月30日(月曜日)