3) 心房中隔欠損症(ASD)
心房中隔欠損症(ASDと略します)
心房中隔欠損症(ASD)はよくある病気のひとつで、長い間あまり強い症状がなく、心臓の雑音も小さいことなどのため学校検診などで発見されず成人期ときには50代―60代になって病院にこられることがまれならずあります。
40歳を超えますと心不全や心房細動あるいは運動時息切れなどのためQOL(生活の質)の低下などが起こります。手術なしで50歳に達するのは半分で以後も年間6%の死亡率があるとのデータもあります。60歳を超える患者さんでもしばしば手術適応となるのはこのためです。
ASDの穴をとおる血液の量が多い時(肺を流れる血液の量が全身を流れる血液量の2倍以上になるとき)や、穴が小さくても右心房から左心房へも血液がもれている時(脳梗塞などが起こりやすくなります)は手術などの治療の対象となります。
最近はカテーテルをもちいてこのASDを閉じることもありますが、ASDのタイプや位置などの制約があり、かつ不確実閉鎖となることもあり、長期成績がまだ不明です。
一方手術は傷が残るという弱点はありますが、安全性が高く、確実に治せるという利点、さらにしばしば合併する三尖弁閉鎖不全症や僧帽弁閉鎖不全症あるいは心房細動・右房拡張を高い確率で治せるという利点があります。三尖弁や僧帽弁は弁形成手術で治します。私たちはとくに心房細動の期間が長期におよぶケースでの治療に力をいれ、必要に応じて心房縮小メイズ手術を使用し、心臓の機能や除細動率を上げています (手術事例 成人の心房中隔欠損症ASD)。肺高血圧を合併したASD患者さんは一般に重症と言われますが、ASDを手術で閉じたあと肺高血圧が改善すると予測できる場合は積極的に手術に取り組んでいます。
20代30代などの若い患者さんの場合は美容も考慮し、正中切開でも傷がなるべく目立たないよう低く切開したり、必要あらば右開胸(乳房の下側の付け根の皮膚を切開し傷が隠れて見えにくいです)などの工夫を行うこともあります。大切なことは安全の確保、ついでできるだけ健康に、美しくという原則を守ることと考えています。
やはりその患者さんの状況に合わせたアプローチが重要といえるでしょう。なお手術はここまで100%の成功率で来ていますが、手術前から他の病気(肺や血管や腎臓など)を合併した患者さんが増えたことと、心臓を開ける手術だけに油断なく慎重にていねいに進めなければならないという意味では他の心臓手術と同じ心構えで手術しています。
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