⑥大動脈基部の手術は?―比較的大きな手術で熟練を要すものも
Q: 大動脈基部 (大動脈の根っこの部分) の病気にはどういう手術があるのですか?
大動脈基部手術ではベンタール手術(ベントール手術)(弁膜症 手術事例10)と
大動脈基部再建(デービッド手術(手術事例1)やヤクー手術など)をその患者さんの状態に応じて使いわけています。
大動脈基部の構造(左図)のうち、弁尖(ひらひらと動き、開閉する部分です、閉じるときはぴたっと完全に閉じます)以外は手術にて再建が可能です。
弁尖もゴアテックス糸その他による吊り上げなど、さまざまな弁形成術の工夫はできますが、まだ長期の安定性が不明な面もあり、さらに検討が必要です。
長持ちする弁形成ができれば、ワーファリンというお薬を飲まずにすむことが多いため、より長持ちする形成法の開発が必要です。
なお大動脈弁輪や大動脈基部が小さいとき、いわゆる狭小弁輪ではどうでしょうか。
左図のようなニックス手術やマノージャン手術などの大動脈基部拡大術を併用し、十分なサイズの人工弁が入るようにします。
最近は小さくても高性能な人工弁が増え、これら大動脈基部拡大手術は以前ほどはやらなくてすむようになりました。
しかし、現在でもときおり、これなしでは手術が成り立たないということもあり、安全のために重要なバックアップ法 (セーフティネット) と位置づけています。
いざという時の守り神があるとないでは安全性が違うと考えています。
つい先日も70代後半の女性で大動脈基部が狭い方が、他の病院で機械弁しかダメと言われて来院されました。
いざとなれば弁輪拡大すれば良いという準備と余裕のもと、無事に生体弁が入りました。
60歳以上の患者さんで弁輪狭小がある場合は、弁輪拡大の技術があれば生体弁が使えることが多いため、(つまり弁輪拡大できないチームでは機械弁になることがあります)、弁輪拡大は患者さんへのベスト治療のために必須のバックアップ法なのです。
自己弁を温存する大動脈基部再建手術(いわゆるデービッド手術やヤコブ手術)では長期間少なくとも10年以上は大丈夫と考えられる症例に施行しています。
(デービッド手術の手術事例1を参照)。
デービッド手術はとくに10代―40代の若い患者さんでは長期成績が安定しやすく、大きなメリットがあると考えられています。
10年持たないと考えられる患者さんにはベントール手術(ベンタール手術)を行います。
生体弁をもちいたベンタール手術が適応になる患者さんにはさらに良い方法があります。
それがミニルート法(またはインクルージョン法)です。
メモ: 基部の手術がやや複雑になるのは、左右冠動脈 の入口があり単に弁だけ取り換えるのではなく、大動脈や冠動脈まで作り直す必要があるからです。
メモ: 大動脈基部が拡張するAAEという病気にはマルファン症候群などの結合組織が弱くなる病気の患者さんが多いです。
同様に、二尖弁という通常3枚あるはずの大動脈弁が、何らかの原因で2枚しかない状態の患者さんでも、大動脈基部の組織が弱いことが証明されており、この病気に注意する必要があります。
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