②大動脈弁狭窄症ではどんな注意を?―高度になると危険な病気
大動脈弁狭窄症(大動脈弁が狭くなり血液が通りにくくなります)では症状(胸の痛みや失神発作など)が強くなってくると突然死の危険性もある危険な病気です。
左室は高い圧をださねばならないため、それに対応するために左室壁が厚くなり(これが左室肥大です)、そのために左室壁が硬くなり、また不整脈が出やすくなります。
こうした二次的問題も怖いのです。
もし心臓が止まり救急隊が間に合っても、心臓マッサージ・心肺蘇生が効かないことでも知られています。
心臓の出口にある大動脈弁が狭いため、心臓を押しても血圧がでにくいからです。
その一方、無事手術を受ければ、そのあとの予後は大きく改善します。
通常、手術は大動脈弁置換術で、60歳以上の患者さんや、60歳未満でも活発な生活を希望される方には生体弁(ウシの心膜材料で作った弁)を選択します。
手術の危険性そのものも低くなりました。
全国平均でも2%程度で、私たちのデータではその半分以下です。
私たちは圧較差が120mmHgを超える、時には200mmHgに達するような高度狭窄の患者さんや90歳を超える高齢患者さんも受け入れています。(高齢者の手術事例1)
高度狭窄のため危険な状態で来院され、手術で元気になられた患者さんは少なくありませ
ん。
心臓が止まるまでに手術の決心がついてよかったと思います。
私たちの経験の中には手遅れと言われて心臓がほとんど動かない状態で手術し、正常まで戻った患者さんや、ショック状態から人工呼吸器や補助循環に乗り、それから搬送され手術し、長期生存を得た高齢者の患者さんもあり、決して見捨てるべきではありません。
また大動脈弁狭窄症のために左室が動かなくなり、強い心不全になることもあります。
たとえば左室駆出率(正常は60-70%)が10%台とか20%台まで落ち込んだケースですね。
そうした患者さんも、手術を乗り切れば左室が回復しやすいため、頑張りがいがあります。
高齢と生活習慣病のためさまざまな問題を抱えた患者さんの場合も同様です。
もちろん病気が多ければそれだけ粘り腰で頑張る必要がありますが。
(手術事例 病気を多くもった患者さん)(手術事例: 気管支喘息をもった患者さん)
また冠動脈狭窄症を合併したケースが増えました。
動脈硬化によって大動脈弁も冠動脈もやられやすくなるからです。
冠動脈狭窄つまり狭心症が合併すれば、そのままでは心筋梗塞や突然死などの注意が必要となることがよくあります。
手術によって安全な状態に改善します。
慢性腎不全・血液透析の患者さんの場合は、冠動脈狭窄症も大動脈弁狭窄症も発生しやすくなり、注意が必要です。
冠動脈バイパス術後に大動脈弁が硬化で壊れて手術が必要になったケースも少なくありません
(手術事例: バイパス術4年後に大動脈弁狭窄症を発生した透析患者さん)。
しかし大動脈弁置換の有用性はもとより、冠動脈バイパス手術も血液透析の患者さんには特に有用で、カテーテルによるステントより良好な長期成績が知られていますし、患者さんにとって意義が大きい手術です。
メモ1: 大動脈弁狭窄症ではその重症度を考えるときに圧較差(あつかくさ)つまり弁の前後でどのくらいの圧の差があるかを指標のひとつとして使います。
ピークの圧較差が60mmHgを超えれば要注意です。
ところが心臓が弱ってくるとその圧較差を出す力がなくなり、圧較差30mmHgなどという状態になることがあります。
そのとき圧較差30だから手術は不要、と考えてそのままにしておけば患者さんの予後は不良です。
つまり遠からず亡くなる確率が高まります。
そこで弁口面積その他さまざまな指標と、経過をも勘案することがあるわけです。
メモ2: この病気は年齢とともに増える病気です。
たとえば80歳を超えたご高齢者ではこの病気の頻度が加速度的に高くなることが知られています。
逆にそのため生体弁が威力を発揮し、術後は大変お元気になる患者さんが多いのです。
生体弁なら心房細動などを合併しない限り、ワーファリン(血栓予防のためのお薬)も不要です。
メモ3: 近い将来は経皮的大動脈弁植え込み術(TAVI タビ)がご高齢の患者さんや全身状態の悪い方に役立つ可能性が高くなりました。
今後の展開が楽しみです
メモ4: 大動脈弁狭窄症の手術のガイドライン ガイドラインは患者さんの治療を安全かつ有効に進めるために大変役に立ちます
お問い合わせはこちらへどうぞ
1.弁膜症 の扉のページへもどる


