④どんな場合に僧帽弁置換術を?

僧帽弁閉鎖不全症では熟練 MVRチームならほとんどの場合弁形成が可能ですが、まれに形成できない、というよりしないほうが良いという状況もあります。

僧帽弁形成手術ができないような患者さん、

たとえば弁がカチカチに石灰化している方や弁の重要部分の大半が感染でばい菌にやられている方、

あるいは短時間に確実に手術をまとめ上げる必要のある超高齢や重症患者さんなどには、

前向きに、僧帽弁置換術を行います。(手術事例:僧帽弁閉鎖不全症等の高齢患者さん)

 

僧帽弁置換術といえども、乳頭筋などを温存すれば、心臓の力は保てますつまりもとの弁を切除して人工弁を入れるわけです。

僧帽弁置換術をおこなう場合でも乳頭筋を温存して左心室の中の自然の構造を守り、良好な術後心機能を得ています(英語論文24番)。

左図で弁を支える糸のような組織につながる筋肉です。

小さい筋肉ですが効率よく作動し、状態によっては左室全体のパワーを10%―20%もアップするという研究結果があるほどです。


ともあれ乳頭筋を温存することで状況によっては僧帽弁置換手術でも心機能では弁形成手術と比べても遜色ないレベルです(弁膜症 手術事例6)。


なお新しい工夫を重ねて弁が硬くなっているケースでも形成ができるようになりつつあり、今後の展開が期待される領域でもあります。


人工弁関係でもさまざまな形で工夫を凝らして修復をおこないます。以前に僧帽弁置換術を受け、その人工弁が壊れたり、人工弁の縫い目が破れたりした場合は、あらためて弁置換術を行うか、縫い目を補強する手術を行います。

二度目~四度目のオペの時点で、前回手術は機械弁でも今回はワーファリンが不利なご年齢になっておられる場合は、生体弁をもちいて患者さんの安全と生活の質QOLの向上を図るようにします(手術事例:三度目の手術、僧帽弁置換術を乗り切り元気に)。大変喜ばれます。

 

心筋梗塞のあとなどに起こる虚血性僧帽弁閉鎖不全症では極力弁形成を行い、術後心機能の改善を図ります。

拡張型心筋症などに合併する機能性僧帽弁閉鎖不全症の場合も同様に、できるだけ弁形成を行います。

いずれの場合も、私たちは通常の形成術とはひとあじ違う、左心室を守る処置を加えた、その状況にあわせた新しい方法で形成を行います。

しかしこうしたケースでも、患者さんの全身状態が悪いなどの場合は僧帽弁置換術で人工弁をもちいて確実に手術が所定の時間内で終われるようにしています。

 

僧帽弁狭窄症(弁が狭くな 僧帽弁狭窄症ります)では僧帽弁閉鎖不全症の場合とちがって、弁が硬く分厚く変化していることが多く、弁形成手術は長持ちするかどうか不明なこともあり、上記の工夫をした僧帽弁置換術が確実に患者さんを助けます。

ただし若い患者さんなどを中心に、ぜひ弁形成が必要な場合はさまざまな方法を駆使して弁形成を行うことが増えました。

全国的にはまだまだ少数の施設でしかできないようですが、専門施設のチームとしてご期待に沿えるよう、工夫を凝らしています。

なお僧帽弁置換が必要な場合、現代の機械弁は以前よりずいぶん改善され、長期の成績(生存率)などが良くなりました。

それを踏まえて患者さんに有利な方を選ぶようにしています。


最近は高齢者や慢性腎不全・血液透析の患者さんが増え、僧帽弁に多量の石灰化(カルシウムで石のように硬くなっています)があり、心臓手術がやりづらいケースが散見されるようになりました。

Ilm23_fe03003-s僧帽弁輪の石灰化ということでMAC(マック)と呼びます。あの骨や石灰岩(右図)と同じ硬い成分です。

熟練チームではこうしたケースに対処するためさまざまな方法を工夫し、ほとんどの場合、スムースに心臓手術が完遂できるようになっています。

私たちはその患者さんの状況に応じて、石灰化をCUSA(キューサ)という器械で必要最小限取り去り、人工弁がしっかりと付けられるようにしています。

また場合によっては石灰を完全に取り去り、そこへパッチで左室形成を行って救命するなどします。

高齢者や体力のない患者さんでは前者が有利と考えています。

 

Ilm19_ca06079-sまた僧帽弁置換術を行う場合でも不整脈(心房細動)を治すことが患者さんに多大なメリットをもたらします。

たとえ機械弁を使う患者さんの場合でも心房細動が治っていれば脳梗塞などの合併症は長期的に減りますし、生体弁の場合はワーファリン(血栓予防のお薬)不要となり安全と便利さが得られます。

そのため心房細動に対するメイズ手術を併せ行い、メイズ手術が効かない重症例では私たちが開発した心房縮小メイズ手術を行い、除細動率を高めるようにしています。(心臓手術事例:重い僧帽弁狭窄症などの患者さん

 

メモ1: やむなく僧帽弁置換術となる場合、人工弁の選択は大切です。

その患者さんの年齢、ライフスタイル、心房細動の有無や除細動に適しているかどうか、などを相談・勘案して一緒に決めて行くことが重要です。

 

Tissue valveたとえば30歳前半の若い女性の患者さんで、感染性心内膜炎のため弁がほぼ全体に壊れていたケースでは、患者さんやご家族が将来の妊娠出産を強く望まれたため、生体弁を選びました(右図は生体弁の一例です)。

もちろん将来の再手術の際にもっとも安全が確保されやすい形で、つまり癒着をできるだけ減らす形でオペしました。

将来の再手術のときには機械弁を選択するかも知れません。

 

これらによって安全に、患者さんのライフスタイルを守り易くなったわけです。

あとで悔いを残さないよう、将来を見据えてできるベストを選択するのが良いと考えます。

 

メモ2: 僧帽弁狭窄症に対する僧帽弁置換術などの手術の日米ガイドラインはこちら

◆患者さんの想い出1:

Aさんは70代後半の男性です。連合弁膜症、15年ものの心房細動と冠動脈狭窄のため米田正始の外来へ来られました。他府県からご指名でお越しくださりありがたく思いました。

元来は健康で農業を活発にやっておられたようですが、リウマチ性の大動脈弁閉鎖不全症と同・僧帽弁閉鎖不全症のため心房細動を合併し、冠動脈の狭窄も加わって心不全が進行し、仕事が苦しくなったようです。

そこで手術になりました。リウマチ性でもなるべく弁形成するように工夫しているのですが、ここは年齢を考え、生体弁でも20年近くもつこと、4つの手術を安全に行うために個々を短時間で確実に仕上げるひつようから僧帽弁置換術を選びました。生体弁が入りました。

大動脈弁も同様に硬く肥厚していましたので生体弁で置換しました。メイズ手術を行い、最後に内胸動脈を前下行枝につないで手術完了しました。

術後経過良好で、正常リズムでお元気に退院されました。外来でもお元気なお顔を拝見し、いつもていねいに挨拶していただき、恐縮しています。

このように僧帽弁置換術は年齢や状況をよく勘案すれば患者さんの安全や健康に大いに役立つのです。若い患者さんにはリウマチ性といえども工夫を凝らして弁形成を行いますが、状況によっては見てくれにこだわらず僧帽弁置換術を活用する、これが大切と思います。

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最終更新日時

  • 平成26年 10月19日(日曜日)