④どんな場合に僧帽弁置換術を?

Q: どんな場合に僧帽弁置換手術をするのですか?

僧帽弁形成手術ができないような患者さん、たとえば弁がカチカチに石灰化している方や弁の重要部分の大半が感染でばい菌にやられている方、あるいは短時間に確実に手術をまとめ上げる必要のある重症患者さんなどには、弁置換手術を行います。

僧帽弁置換術といえども、乳頭筋などを温存すれば、心臓の力は保てますつまりも との弁を切除して人工弁を入れるわけです。その場合でも乳頭筋を温存して左心室の中の自然の構造を守り、良好な術後心機能を得ています(英語論文24番)。左図で弁を支える糸のような組織につながる筋肉です。小さい筋肉ですが効率よく作動し、状態によっては左室全体のパワーを10%―20%もアップするという研究結果があるほどです。

ともあれ乳頭筋を温存することで弁置換手術でも心機能では弁形成手術と比べても遜色ないレベルです(弁膜症 手術事例6)。

さいきんではアメリカの誇る世界的女優、エリザベス・テイラーさんが77歳で僧帽弁置換術を受けられました。おそらく僧帽弁が壊れすぎて形成に不向きであったものと推察されます。ご年齢から察するに生体弁を使われたのでしょう。手術からまもなく故マイケルジャクソンのこどもさんたちと遊園地に行くほどお元気になられて何よりです。

なお新しい工夫を重ねて弁が硬くなっているケースでも形成ができるようになりつつあり、今後の展開が期待される領域でもあります。

僧帽弁狭窄症(弁が狭くなります)では僧帽弁閉鎖不全症の場合とちがって、弁が硬く分厚く変化していることが多く、弁形成手術は長持ちするかどうか不明なことも多く、上記の工夫をした弁置換手術が確実に患者さんを助けます。現代の機械弁は以前よりずいぶん改善され、長期の成績(生存率)などが良くなりました。それを踏まえて患者さんに有利な方を選ぶようにしています。

最近は高齢者や慢性腎不全・血液透析の患者さんが増え、僧帽弁に多量の石灰化(カルシウムで石のように硬くなっています)があり、手術がやりづらいケースが散見されるようになりました。僧帽弁輪の石灰化ということでMACと呼びます。熟練チームではこうしたケースに対処するためさまざまな方法を工夫し、ほとんどの場合、スムースに手術が完遂できるようになっています。私たちはその患者さんの状況に応じて、石灰化をCUSAという器械で必要最小限取り去り、人工弁がしっかりと付けられるようにしています。また場合によっては石灰を完全に取り去り、そこへパッチで左室形成を行って救命するなどします。高齢者や体力のない患者さんでは前者が有利と考えています。

また僧帽弁置換術を行う場合でも不整脈(心房細動)を治すことが患者さんに多大なメリットをもたらします。たとえ機械弁を使う患者さんの場合でも心房細動が治っていれば脳梗塞などの合併症は長期的に減りますし、生体弁の場合はワーファリン(血栓予防のお薬)不要となり安全と便利さが得られます。そのため心房細動に対するメイズ手術を併せ行い、メイズ手術が効かない重症例では私たちが開発した心房縮小メイズ手術を行い、除細動率を高めるようにしています。

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最終更新日時

  • 平成22年 9月2日(木曜日)