12) 特発性大動脈弁下狭窄症 IHSS―突然死に注意、しかし治せる病気です

図4 IHSS日本語IHSS(別名HOCM、閉塞性肥大型心筋症)では左心室の出口付近からトンネル状に狭くなります。

すこし狭いだけなら経過観察やお薬による治療で行けるのですが、

重くなると左室の出口に蓋をしたようなかたちになりますから、強い心不全となり、

失神や突然死することさえあります。油断はできません。

 

IHSS術前後エコー狭窄(狭くなること)の形が膜様であればそれを切除し、適宜付近の異常心筋も切除しますが、

繊維筋症であれば異常心筋を広く切除し(モロー手術と呼びます)、必要があれば大動脈弁の形成または置換を行います。

右図は重症のIHSSの術前後の心エコー図です。左側は術前で、赤い矢印は心室中隔の肥厚と突出を、白い矢印はSAMを示します。右側は術後で赤い矢印でひろびろとした左室流出路を、白い矢印で正常になった僧帽弁を示します。

 

カテーテルで異常心筋を縮める方法(PTSMA)もありますが、冠動脈の位置と異常心筋の位置が食い違うことがあり、効果が十分上がらなかったりかえって薄くなりすぎたりという場合もあります。

さらに約10%に完全房室ブロックが発生して永久ペースメーカーが必要になりますので、個々の患者さんの状態や経過に応じて考えることが大切です。

 

ベンチュリー効果説明この大動脈弁下狭窄症 IHSS(別名HOCM)には上記のように僧帽弁前尖の収縮期前方移動(SAMと呼びます)と僧帽弁閉鎖不全症が合併することがよくあります。

このSAMが起こるしくみは香水のスプレーに似ています。スプレーでは空気の流れが香水を巻き上げて、霧のように香水を噴射しますが、IHSSでは血液の流れが僧帽弁を巻き上げるのです。

弁が巻き上げられた結果、僧帽弁は逆流するのです。

つまり病気なのは僧帽弁ではなく異常心筋であるため、IHSSでは

異常心筋切除手術により僧帽弁は自然に改善することが多いです。

心不全も同時に軽快します。 (IHSS 手術事例1 )

 

トロント総合病院にはこのIHSSの専門家と成人先天性心疾患の専門外来(ウェブ教授 Prof. Webb)があり、その患者さんに対してウィリアムズ先生(Prof. W. G. Williams)のご指導のもと、毎週のようにこのモロー手術を行っていたため多数の症例をみずから経験できました。

A307_116このノウハウを活かした手術を行い、予後の改善に努めています。

実際日本での個人的経験でも50代60代の患者さんも少なくなく、病気はこどもの病気でも患者さんは幅広い年齢にわたることを実感しています。(手術事例: IHSSと大動脈弁狭窄症とペースメーカー三尖弁閉鎖不全症を根治)

胸痛息切れ、あるいは失神発作を起こした方は命取りになるまでに、なるべく早めにご相談下さい。

以前、ある病院の内科の先生がこのIHSSの20代の患者さんを診た時に、失神発作さえ起こしておられたのに、どうしてよいかわからずにそのまま放置し、後日、心内膜炎を起こして脳梗塞と出血に至り、結局死亡されたというケースがありました。大変残念なケースでしたが、それほどこの病気を知らない医師は多いのです。まずは専門家、とくにこのIHSSの治療経験をもつ医師にご相談されるのがベストです。

このIHSSは熟練チームなら治せる病気ですから。近年は技術がさらに進化し、左室の出口の異常心筋だけでなく、左室の中ほどにある心筋やさらに奥深いところまで形成できるようになり、心臓外科の威力が発揮しやすくなっています。

 

大動脈弁狭窄症や不整脈(心房細動)などを合併し、より苦しい症状をもつ患者さんも増えました。

これらを合わせて治療することで術後経過は改善します。

IHSSの手術事例2 へ)


◆患者さんの想い出:

Aさんは50代女性です。大動脈弁狭窄症をお持ちでしたがそれほど重症ではないため内科の先生のもとで定期健診を受けておられました。

最近どうも心不全症状が出るとのことで紹介されて来られました。

よく調べてみると、大動脈弁下狭窄症IHSS(別名HOCM)が合併しているのです。そのために苦しいのではないかと考えるようになりました。しばらく経過を見ていたのですが、心不全や、不整脈発作がたびたび出て、その都度病院の救急外来に来られるため、2つの病気のそれぞれは特に重いわけではないが、2つあわさった負担が大きいと判断しました。

そこで大動脈弁下狭窄症IHSSに対する異常心筋切除術(モロー手術)と大動脈弁置換術を併せて行いました。

術後経過は順調でまもなく元気に退院されました。その後も元気に外来に通院しておられます。手術前はあれほど何度も救急外来に来ておられたのに、手術後はそれがパタリと止み、お元気に暮らしておられるのがよくわかりました。Aさん、大動脈弁下狭窄症IHSSも一緒に直せて良かったですね。

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最終更新日時

  • 平成26年 7月6日(日曜日)