12) 左室形成術と他治療法―治療法を組み合わせてベストの威力へ
Q: 拡張型心筋症への手術(左室形成術や僧帽弁形成術など)の後でお薬やその他の方法ではどのようなものが役立つのですか?
一旦手術を乗り切れば心臓も全身もかなり良くなることが多いため、その改善した心臓を長く守るため効果あるお薬(ACE阻害剤、ARB、スピロノラクトン、β―ブロッカー、などなど)を研究し使いこなしています。
これらのお薬はうまく使えば、それぞれ単独でも心不全の患者さんの寿命を長くしたり生活の質を向上したりするのに役立つことが知られています。
これらを手術と組み合わせれば一層の改善が期待されます。
また左室形成術でパワーアップした左室を両室ペーシング(愛称バイベン、bi-ventricular pacingの略です)がさらに改善することがあります。
とくに左室内での信号伝達がずれるタイプの患者さんで効果があります。
両室ペーシングは左室と右室の両方をペーシングすることで左室のうち、内側に面した心室中隔と外側に面した自由壁をほぼ同時に動かすことで無駄をはぶくものです。
そこでCRT(心臓同期療法)とも呼ばれます。
それと少し似た雰囲気の治療法としてICD(植え込み型除細動器)があります。
心筋症の患者さんの中には薬や手術でもなかなか治らない難しい不整脈をお持ちの方もあります。
そうした不整脈の中で、命にかかわるものが時たま出るとき、救急外来にまで行く時間がありません。
そこでICDというペースメーカーによく似た器械を体内に埋め込んでおき、もし危険な不整脈が出れば器械がただちに検出し、コンピュータ制御で自動的に電気を出して除細動つまり危険な不整脈を治してくれるのです。
これによって患者さんの予後はさらに改善することが期待されます。
中には上記のCRTとICDをくっつけて、両室ペーシングと除細動の両方をやってくれるCRT-Dという新鋭の器械もあります。
こうした高価で高性能な器械は、患者さんの状態や必要性・有用性をしっかりと把握し、正しく使うことで大きな恩恵を患者さんにもたらしてくれるでしょう。
こうしたさまざまな治療法が不十分で心不全が危険なレベルになれば、補助循環が威力を発揮します。
いわゆる人工心臓の一種ですね。
かつては大きな器械が患者さんのお隣にどっかと腰をすえて、患者さんはどこへも行けずにただじっと耐えて生きるだけ、というきらいがありました。
しかしこの20年の進歩はめざましく、まず体内に植え込むタイプの補助循環装置LVAS(またはLVAD)で3-5年以上元気に暮らせるようになりました。
さらにその植え込み型補助循環装置が進化し、小型の軸流ポンプや遠心ポンプの改良で小柄な日本人でも長期間高いQOLで元気に暮らせるようになりつつあります。
近い将来、心移植の5年生存率を補助循環が上回るだろうと言われるほどの展開になってきています。
いわゆるDestination Therapyつまり心移植までのつなぎではなく、最終ゴール治療法としての補助循環ですね。
そのため、左室形成術はこの補助循環までのブリッジとしての役割が考えられるようになってきています。
そして最後の手段は現在も心移植となります。
2年前の法改正によって日本での心移植も急増し、以前より多くの患者さんが恩恵を受けられるようになってきています。
さらに近い将来には再生医学の方法(細胞移植、血管新生や抗繊維化治療とくに遺伝子もベクターも使わない安全なたん白徐放剤で)も併用して心臓をさらにサポートできるようになるでしょう。
すでに動物実験では良い成績を出しています。
日本では規制が強いため、私たちは先進的な治療に理解のあるタイ国で再生医療を開始しつつあります。
タイで実績を上げ、日本に逆輸入したく考えています。
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