10) 左室緻密化障害の手術―予後を改善するためにもっと努力を
Q: 左室緻密化障害の心臓にも左室形成手術は役立つことがあるのですか?
左室緻密化障害 という病気は生まれたときからの病気でそれが悪化して拡張型心筋症になることがしばしばあります。
左室緻密化障害の場合は心筋が緻密な状態に育たないため隙間が多く、そこで血栓が発生して脳梗塞などを起したり、心臓の力が出ずに心不全になるという大きな問題があります。
そもそも本来スクラムを組んで助け合うべき心筋が柱状にばらばらになっている状態ですから、心筋への血液供給も本来のように四方八方から送られてくるべきものが、柱の上下だけからしか来ないため、虚血になりやすいのです。
実際手術中に左室を見ると、内側の肉柱ほど、それも血液供給がもっとも少ない柱の中ほどの部位ほどやせ細り、瘢痕・線維化している姿をいつも目にします。
たとえ冠動脈が正常でも基本的に虚血性心筋症への道をたどっているという一面があるのです。
長い間には心内膜側の心筋虚血が進行し、線維化などが起これば拡張機能障害や肺高血圧症が進むこともあります。
また異常な心筋が左室の中を狭くして、左室が十分な血液を送れない状態になることもあります。
それ以上に左室壁が薄い形となって、そこに大きな張力がかかり、左室がその張力に負けて拡張して崩れて行くことが問題です。
私たちはこれらを考慮した左室形成術を行いアメリカのジャーナルで報告しました。
左室緻密化障害に対する左室形成術としては世界初のメジャージャーナル報告とのことで、血栓・塞栓と心不全の両方を予防するよう工夫しています。
(拡張型心筋症・手術事例7(左室緻密化障害・症例1))。
さらに症例を重ねて患者さん達の予後改善に努めています。 手術事例 左室緻密化障害 2
今後この病気の予後の改善に役立てればと念じて努力しています。
メモ: 現時点では左室緻密化障害に対する私たちの左室形成術や僧帽弁形成術は心不全とくに左室拡張機能不全の治療や予防、そして血栓・塞栓したがって脳梗塞などの「予防」という意味合いが強いと思います。
将来的には再生医学の方法をもちいて、左室のスポンジ状の部位に血管新生や心筋再生を図り、ミクロレベルの心筋虚血を軽減することで心臓のさらなるパワーアップと長期安定を図れればと思います。
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