10) バルサルバ洞瘤―破れるまでにきちんと治しましょう
大動脈の根元の部分(心臓に近いところ)のポケット状に膨らんだ部分(左図で「バ洞」と示します)がバルサルバ洞です。
これが瘤(こぶ)状に拡張したものがバルサルバ洞瘤です。
一番多い右冠動脈洞のバルサルバ洞瘤は通常右室に破れ、次に多い無冠動脈洞のバルサルバ洞瘤は右房に破裂します。
診断は心エコーやCTで容易につきます。
破裂口が大きいと胸痛や呼吸困難、心不全が急に出現します。
その場合は緊急手術が必要なケースもあります。
手術では体外循環下に破裂口を直接またはパッチで閉鎖し、必要に応じて大動脈弁の形成などを行います。
またそれ以外の病気(心室中隔欠損症など)が合併している場合はそれらも併せて修復します。
手術のリスクは状態が落ち着いているときの手術であればたとえ大動脈弁の形成や置換が必要なケースでもそう高いリスクではありません。
年齢や他の内臓疾患にもよりますが、1-2%以内のことが多いです。
しかしすでにショック状態で人工呼吸器に長く乗り、肺炎を併発したり他臓器にも障害が起こり、となればリスクは上がります。
早目のご相談が患者さんにとって安全で有利な展開に結びつきます。
なおマルファン症候群や大動脈二尖弁その他の患者さんで大動脈基部が拡張し、とくにバルサルバ洞が瘤化するという意味でのバルサルバ洞瘤が近年は増えました。
この場合は破裂すると心不全ではなく突然死になってしまうため要注意です。
このタイプのバルサルバ洞瘤は必ずしも先天性心疾患ではありませんが。
この場合、瘤が破裂するまでに手術で治すことが望ましく、患者さんご自身の弁を温存するデービッド手術が理想的です。
弁尖つまり弁の可動部分以外をすべて安定した人工血管で取り換えるわけです。
いったん手術できれいな形が確保できれば、これによって長年ワーファリンなしの生活が期待できます。
自己弁が壊れてしまっている場合はベントール手術が適応となります。
大動脈の基部や弁をすべて代えて、病気を根治してしまうわけです。
年齢や患者さんのライフスタイル、ご希望などに応じて機械弁と生体弁を使い分けます。
いずれにせよ、バルサルバ洞瘤は早期発見と的確な治療が大切な病気です。
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