動脈硬化症

動脈硬化症は全身のさまざまな動脈に起こります。糖尿病(血液の中の糖分が増えすぎて腎臓・眼・心臓・血管・神経などがやられます)、高脂血症(血液の中のコレステロールや中性脂肪が増えすぎる状態)、高血圧、たばこ、肥満、ストレス、慢性腎不全・透析、高齢、その他さまざまな原因で動脈硬化は発生します。毎日の生活、食事や運動、規則正しい生活をはじめとした毎日の生活習慣を健康的にすることが大切です。それらの心配がある方はかかりつけの内科の先生方と相談され、また定期健診を受けて確実を期されるのがよろしいかと思います。
私は心臓と血管を専門としておりますので、その観点から少しご説明します。

Q: 心臓の動脈硬化症はどうなるのですか?

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A: 心臓の動脈硬化症

は主に冠状動脈の硬化になりますので、本ホームページの虚血性心疾患のページをごらん下さい。
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図は冠動脈バイパス手術の典型的な形を示します。

内胸動脈などは動脈硬化が起こりにくいという特長があるため、心臓(狭心症)の治療に有利です。

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Q: 大動脈の動脈硬化症にはどういうものがあるのですか?

A: 大動脈の動脈硬化症は本ホームページの大動脈疾患のところをご覧下さい。大動脈がこぶのように膨れる大動脈瘤や、大動脈がある範囲にわたって膨らむタイプの瘤などがあり、また大動脈の壁が裂けて血液が体にうまく流れなくなったり大動脈が破裂する大動脈解離も広い意味ではこのグループに入ります。

Q: 下肢の動脈硬化症では足が腐ったりすると聞きましたが?

A: 下肢の動脈硬化はとくにASO(閉塞性動脈硬化症)として大きな社会問題になっています。糖尿病や慢性腎不全・透析の患者さんなどの場合、起こりやすい病気です。

また若い方に多いバージャー病は動脈硬化とは少し違う形ですが、ASOと同様に下肢1 に血液が流れにくくなり同じ問題が生じます。下肢の動脈が次第に細くなり閉塞すると下肢が腐ってしまい(左図)、痛みのみならず生命の危機に陥ることも多くあります。そうなると命には代えられないということで下肢をやむなく切断しなければならないケースもあります。

日本では毎年1万人以上の方がこのために下肢を切断されているというデータもあります。下肢を切断されたらとりあえず命は助かっても患者さんの生活は悲惨です。仕事がある方の場合は失業にもなりかねませんし、お年寄りであれば身の回りのことができなくなったり運動不足から体調も悪くなり、大変困った状況になってしまいます。

また近年は心臓などのカテーテル検査・治療に関連したコレステロール塞栓で足などの動脈が詰まり、強い痛みとともに下肢が腐り(壊死(えし)と呼びます)、切断に至ることも増え、注意が必要です。

もし下肢とくに足や足の指が冷たくなり色が変われば早めに専門医にご相談されることをお勧めします。専門医がわからない場合は循環器や内科あるいは血管関係の医師でもよいでしょう。

Q: 下肢のASOが重症化したらどういう治療法があるのですか?

下肢の比較的太い血管が動脈硬化のために細くなったり詰まったりしている場合、カテーテルで広げる(PTAと呼ぶ治療法です)ことで血流がまた流れるようになれば下肢の状態は改善する可能性が高くなります。またカテーテルでPTAできない状況では、下肢バイパス手術で血液が流れるようにできるケースが多くあります。バイパス手術には腹部大動脈から大腿動脈へのバイパスや、大腿動脈から膝か動脈へのバイパスさらにはもっと末梢へのバイパスなどもあります。
しかしそれらの方法ができない、あるいは血液が十分流れないときは様々な工夫が必要になります。お薬で血液をサラサラにして流れをよくするとか、血液(赤血球)を柔らかくしてせまいところでもより流れやすくするとか、点滴などで下肢の細い血管をできるだけ広げるなどの方法である程度の改善が見込めるケースも多々あります。

Q: こうした従来の治療法でだめなとき、何か方法はあるのですか?

上記の従来治療をどのように駆使しても下肢の血流が不足し、下肢を切断する危険が迫っている場合には下肢に新しい血管を造って下肢を救う血管新生療法という試みがあります。これは再生医学の一つです。

Fgf_2

左図はbFGF徐放の動物実験の写真です。bFGFで目に見える血管が沢山できているのがわかります。こうした実験を糖尿病や高コレステロールの動物で十分行い、効果と安全性を確認してから下記の臨床試験に入りました。

これまで実績があるのは骨髄の細胞(たとえば骨髄単核球細胞)を下肢に注射して血管を作る方法で一定の成果が報告されています。私達はこれをさらに立派にすべく、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)というたんぱくを下肢で4週間じっくりと効かせる(徐放)方法を京都大学再生医科学研究所の田畑泰彦先生らと開発しこれまで7名の患者さんに臨床試験として使用しました。痛みが消え、下肢の皮膚潰瘍が治るケースが多く、今後さらに展開させたく考えています。これまでは京大病院でこの治療法を行ってきましたが、同病院では現在これは止まっており、現在豊橋ハートセンターと海外の病院で再開準備中です。何よりも安全第一のため様々な準備、設備、倫理委員会や法律遵守のための手続きなどが必要なため時間をかけて取り組んでいます。

Fgf

写真はバージャー病の患者さんの治療前後の比較をしたものです。ASOでも同様の効果が出ています。

安全重視のためまず最少量のbFGFを使っていますが、それでもこれだけ効くことから皆勇気づけられ、今後徐々に量を増やして一層の効果を期待しています。

将来的にはES細胞iPS細胞などの万能細胞を使えるようになれば良いのですが、現時点ではこれらはまだまだ実験段階で、効果も安全性も未確定なため、自然で体にやさしいbFGF徐放による治療を進める努力をしています。

Q: bFGFを用いた再生医療の特長は?

bFGFたんばくの徐放(じわりと効かせる)の方法は
Bfgf1.遺伝子治療ではなく、そのためウィルスの運び屋(ベクター)などの危険性あるものを使わずにすむ、将来がんなどの病気が起こる心配が少ない、

2.下肢以外の体にはbFGFがほとんど行かない(たとえば血の中のbFGFの濃さは健康人と同じです)ため副作用 が起こりにくい、

3.骨髄から細胞を押し出すタイプの薬も必要ないため、その副作用も心配ない、などなどの利点があります。また骨髄細胞などの場合よりも太い血管、といっても小動脈ですが、とにかく動脈が創れるため、血液をより多く流せるうえに長持ちしやすいと言うメリットもあります。

顕微鏡写真でbFGF徐放ではより大きいサイズの血管(動脈)ができることを示しています。

Bfgf_24.下肢に筋肉注射するだけなので15分もあれば終了します。つまりどこも切らずにすみます。

いずれは外来でもできるようになると考えますが、当面は安全のため手術室で下半身の麻酔をして行っています。

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最終更新日時

  • 平成21年 7月 2日(木曜日)