三尖弁の弁膜症
Q: 三尖弁の病気にはどういうものが多いのですか?手術ではどのようにして治せるのですか?
三尖弁の病気の多くは僧帽弁の病気にともなう閉鎖不全症です。これには弁形成術とくに弁輪(弁の土台の部分)を縫い縮める弁輪縫縮術が適切です。またペースメーカーケーブル(三尖弁越しに右房から右室へとケーブルが入ります)による三尖弁閉鎖不全症が増え、最も多数を占めるようになりました。
弁輪縫縮術には糸で弁輪を
小さくするDeVega(ドゥベガ)法とリングを用いる方法があり、一般にドゥベガ法は簡略法で手軽にでき、リングを用いる方法は多少手間と時間がかかるかわりに効果がより確実で長持ちする傾向があります。
私達は重い三尖弁閉鎖不全症にはリングを用い、軽いものには糸で対処できるドゥベガ法を用いて患者さんのニーズにあった方法を使い分けています。
長い年月の間に複数回の弁手術を受けられた患者さんで三尖弁のみ問題というケースがときにありますが、そうしたケースでは右開胸とテーピング無し(つまり剥離が少なくて済みます)の方法を工夫して体の負担が小さくすむようにしています。
Q: 三尖弁閉鎖不全症は重症になるといのちの危険があると聞きましたが?
三尖弁閉鎖不全症自体で直ちに死亡するケースは少ないですが、三尖弁閉鎖不全症のため肝臓がうっ血し(うっ血肝と呼びます)、次第に肝臓が破壊され機能も低下し、その状態が続けば うっ血性肝硬変にまで悪化します。こうなると重症肝硬変のため肝不全で死亡する危険性が高くなります。三尖弁閉鎖不全症でも重症となると油断できないのはそのためです。
うっ血肝は三尖弁閉鎖不全症を手術で治せば治ります。しかし肝臓の力があまりにも落ちて肝不全になってしまうと、心臓手術の負担に肝臓が耐えられなくなってしまいます。またうっ血性肝硬変にまで進んでしまうと、心臓を治しても肝臓はもとの状態にはもどれず、結局肝不全で死亡する危険性が高くなります。やはりある程度のタイミングで手術すること、そして経験豊かな専門家と相談することが大切です。
Q: ペースメーカーのケーブルが三尖弁閉鎖不全症をおこすことがあると聞きましたが?
永久ペースメーカーのリード線が三尖弁の動きを妨げ三尖弁閉鎖不全を引き起こすことはEBM(証拠に基づく医学)でも知られていますが、私達はこれをリード線の位置を安定化したうえで弁形成しています。さらにリード線に三尖弁の腱索が巻きついて形成が困難な状況でも巻き込まれた腱索を切除しゴアテック
ス人工腱索を用いることで形成ができるようにしています((ペースメーカー三尖弁閉鎖不全症 症例1)
これらの比較的複雑な形成は、僧帽弁形成術の技術蓄積を活かして形成を完遂できるようにしています。ほとんどの場合、三尖弁の形成は心臓が動いた状態で行い、心臓への負担を軽くするように努めています。
複数のリード線が三尖弁を逆流させている状態でも形成はできています。
ただし弁(葉)そのものが破壊されたり強く短縮するなどの変化をきたした場合は形成に限界が生じると考えます。ペースメーカーを入れたあとの三尖弁逆流でお困りのときは早めにご相談ください。
三尖弁位の人工弁の成績は機械弁・生体弁ともまだ満足できるレベルにはなく、弁形成手術を行うことが患者さんにとってメリット大と考えています。



